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CAR 2019.8.13 

ついに、真打ち登場! ポルシェ718スパイダー&718ケイマンGT4の出来映えは?

「ミドシップ・ポルシェを楽しむなら、GTSに限る!」。ENGINE2019年8月号のポルシェ特集の中の、718ケイマン&ボクスターをめぐる座談会記事にはこんなタイトルが付いていた。しかし、早くもその前言を撤回する必要が出てきた。

というのも、新たに加わった718スパイダー&718ケイマンGT4の出来ばえがあまりに素晴らしすぎて、その走りを体験した日には、誰もが「ミドシップ・ポルシェを楽しむなら、スパイダー&GT4に限る!」と声を大にして言いたくなること請け合いだからだ。

正直言ってこの2台、予想を大きく上回る出来ばえだったと言っていい。いやもちろん私だって、英国スコットランドで開かれた国際試乗会に向かう機中から、大いに期待はしていた。なにしろ、今では4気筒ターボに換装された718シリーズにあって、唯一、自然吸気6気筒を積む最後の砦だ。

しかもそのエンジンは4ℓで、911GT3のそれを流用しているという噂もあった。さらに組み合わされるトランスミッションは6MTのみというのだから、運転をとことん楽しむことに照準を合わせたモデルであるに違いないのだ。

とはいえ、いささかの疑念があったことも告白しておかなければならない。果たして、そんなにパワフルなエンジンを載せて、リアにマルチリンクの脚を持つ911とは違い、前後ストラットの718のシャシーが耐えられるのだろうか。結局、バランスが崩れるだけじゃないのか。

■718ケイマンGT4 

↑レーシーな雰囲気たっぷりなブラックのアルカンターラを多用したGT4のインテリア。ドアオープナーはモータースポーツ由来のループとなる。試乗車にはフルバケットシート、ロールケージ、消火器を含むクラブスポーツ・パッケージがオプション装着されていた。

↑3連メーターの中央に配置された回転計の文字盤はチタニウム・カラー、目盛りと針は他のGTモデルと同じイエロー。

↑リア・エンドには巨大な固定式ウィングおよびボディと一体化されたウィングレットを持つ。

■718スパイダー

↑アルカンターラがふんだんに使われることや、ドアオープン・ループが装備される点はスパイダーもGT4と同じだが、こちらはセンター・コンソールとダッシュボード、ドアの装飾パネルがボディ・カラーで塗装され、よりオシャレな印象となる。3連メーターの中央の回転計の文字盤はブラック、目盛りと針はホワイト。

↑リアのトランク・カバーには素敵なデザインのハイマウント・ストップランプが付く。そして至る所にスパイダーの文字。リアスポイラーは120㎞ /hで自動展開する。
 

実際、2009年に初登場したボクスター・スパイダー(987型)が目の覚めるような走りの気持ちよさを持っていたのは、パワーによるものではなかった。

エンジンはボクスターSより10psパワフルな320psに過ぎなかったが、幌を極力簡易なものに換え、ドア・パネルをアルミ化するなど徹底的に軽量化したことにより、動き出した瞬間に軽さを感じ、曲がっただけで思わず笑顔になるような、清々しいスポーツカー本来の走りを実現していたのだ。

2015年に登場した2代目ボクスター・スパイダー(981型)はその正常進化版と言えるモデルだったが、初代のあまりに簡易だった幌の強度や耐候性を向上させるなどした結果、重量が増していた。

その分を今度は911カレラSから流用した3.8ℓエンジンのパワー(375ps)で補い、より速くなったものの、その走りには初代が持っていたほどの清々しさは感じられなかった。

一方、時をほぼ同じくして初登場したケイマンGT4(981型)は、911GT3から足回りを移植し、エンジンも911カレラSと同じ385psにして、サーキット走行に準を合わせたモデルだと謳っていた。

“GT”の名を冠した初のミドシップ・モデルということで、走りのレベルが格段に上がっていたのは間違いない。とはいえGT3と比べると、速さにおいても、クルマ全体に漲る硬質感においても見劣りする感じは否めなかった。

とりわけ、リアがストラットであることに起因すると思われる最後の最後での踏ん張りの効かなさがサーキットでは気になった。

果たして、718スパイダーと718ケイマンGT4は、どんなスポーツカーに仕立てられているのか。

気筒休止もする新エンジン

エジンバラ空港からクルマで北に30分ほど行った所にある、全長約2㎞のノックヒル・レーシング・サーキット。このスコットランドでは唯一のFIA公認レース・トラックが今回の718ケイマンGT4の試乗の舞台だった。

一方、718スパイダーの試乗はここからさらに北に位置するホテルに向かう丘陵地帯の一般道を使って行なわれた。

初日、夕方からのプレス・ブリーフィングで、いきなり予想を覆す新情報が次々と披露された。最大の驚きはエンジンである。

ボア×ストロークも含めてまったく同じ4ℓの自然吸気フラット6でありながら、これはGT3由来のものではなく、992型の3ℓフラット6ターボをベースに、完全に新開発したものだという。

そもそも、ターボ化された991後期型からの新エンジン・ファミリーはコード・ネーム“9A2”と呼ばれるのだそうで、その発展型が992型に載る“9A2エボ”だ。

今度の4ℓフラット6はその一員であり、Gt3の“9A1”ファミリーとは系統が違うというのだ。もっとも、同じ“9A2エボ”といっても、992型のそれとは、排気量を上げて自然吸気化されているだけでなく、シリンダー内部の材質は大きく変えてあるし、ヘッド部分に至ってはまったく別モノになっているという。

そりゃ、8000回転まで許容して、7600回転で最高出力420psを得ようという高回転型の自然吸気ユニットなのだから当然と言えば当然だろう。

しかし、さらに驚かされたのは、このエンジンにはポルシェのフラット・エンジンとしては初めての気筒休止システム、アダプティブ・シリンダー・コントロールが導入されていることだった。1600~3000回転での低負荷の巡航時に片バンクが休止する。

そして、休止する側は20秒おきに変更されるのだそうで、これによって約11%の燃費節減がきるのだという。合わせてGT4とスパイダーでは初めてとなるアイドリング・ストップ・システムが導入され、さらに直噴システムにピエゾ・インジェクターを採用したのも、有毒ガス排出を低減するためだ。

そしてもうひとつの驚きは、GT4とスパイダーでチューニングを変えることなく、まったく同じスペックでこのエンジンを使うことで、それはシャシーについても同様だという。完全にGT系のエンジニアの手によって開発された足回りには、ノーマルのケイマン&ボクスターから流用しているパーツはほとんどない。

同じストラット式のフロントに加えて、サスペンション形式の違うリアでも、GT3から流用できるものはすべて使っているという。サスペンションとシャシーの連結にはボージョイントを使い、コントロールアームはすべてキャンバーやトウの角度が調整可能なものになっている。

↑GT4とスパイダーのパワートレインとシャシーは新型では完全に共通化された。

もうひとつ、この新型で特筆すべきはエアロダイナミクスの進化だろう。GT4にもスパイダーにも、巨大なリア・ディフューザーが装備されている。

これがかなりの効果を発揮するようだ。巨大なウィングも持つGt4は、空気抵抗値は先代と同じ状態を維持しながら、ダウンフォースを50%も増しているというのだ。

↑さらにウィングこそ異なるものの、いずれも同じデザインの巨大なリア・ディフューザーを備え、空力性能も格段に向上している。

それを可能にしたのは中央に配置された左右一体型のメインサイレンサーの採用によるもので、ディフューザーを囲むサドルのような形状になっている。

↑スパイダーの幌は簡易ながら301㎞/hの最高速度まで耐えられる。

そして、この日最後の驚きは、新型ケイマンGT4のニュルブルクリンク北コースでのラップタイムが先代より12秒も速い7分28秒で、なんとあのカレラGTのタイムを0.7秒上回るものだということだった。

文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=ポルシェA.G.

■ポルシェ国際試乗会の続きはこちら
ポルシェ718スパイダー&718ケイマン GT4登場。英国スコットランドでENGINE編集長 村上 政が試乗した。

718ケイマンGT4(718スパイダー)

  • 駆動方式 エンジン・ミド縦置き後輪駆動
  • 全長×全幅×全高 4456(4430)×1801×1269(1258)㎜
  • ホイールベース 2484㎜
  • 車両重量 1420㎏
  • エンジン形式 直噴水平対向6気筒DOHC
  • 排気量 3995㏄
  • ボア×ストローク 102.0×81.5㎜
  • 最高出力 420㎰/7650rpm
  • 最大トルク 42.8kgm/5000-6800rpm
  • トランスミッション 6段MT
  • サスペンション(前) マクファーソン式ストラット/コイル
  • サスペンション(後) マクファーソン式ストラット/コイル
  • ブレーキ (前後)通気冷却式ディスク
  • タイヤ (前)245/35ZR20、(後)295/30ZR20
  • 車両本体価格  GT4  1237万円(税込み) スパイダー  1215万円(税込み)

ポルシェ 長期テスト・レポート 

718ケイマン&ボクスターGTS試乗。ミドシップ・ポルシェを楽しむなら、GTSに限る!

あの事件から1年。6気筒NAのボクスターにこだわる飯田裕子さんの愛をもう一度。

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