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PLAYING 2019.7.5 

ポルシェ924と日産リーフのある家。ガラスで囲われた広々二世帯住宅。/クルマと暮らす24

EVのリーフと比べると、古い924のなんと小さなことか。広~い家がますます広く見えてくる!

ポルシェ924と日産リーフ、どちらも楽しい

「昭和の時代に手に入れたポルシェ924Sクラブスポーツ(1988年製)に、いまだに乗っています」と、話す会社経営者の森茂徳さん(64歳)。「どこかカエルに似た911ではなく、流線形だから924が好きなんです。サイズ感が良いので、体の一部のようにコントロールしやすいうえ、重量配分が適切なため、コーナリングが楽しい」と、これまで3台の924に乗ってきた。

最初は1976年に日本に輸入された初期ロットを。奥様の由紀子さんとデートを重ねた、思い出の一台だ。続いて924が80 年にルマンに出場した際に登場した限定車を。そして924が生産中止になるというので乗り換えたのが、今乗っている最終モデルである。走るのが好きで、若い頃は1人で箱根に随分と出かけたが、年齢を重ねるに従って時間がとれなくなり、遠出はゴルフ場が殆ど。924にはゴルフバッグが1つしか積めないため、31年間所有しているものの、距離計はまだ3万9000キロでしかない。

ポルシェ924Sは、黒のボディカラーに緑のパイピング、緑のホイールラインが特徴の限定車、クラブスポーツ。普段はシャッターのあるガレージで保管されており、素晴らしいコンディション。
乗る機会が少ない割に維持費がかかるので、数年前に裕司さんが1/16のプラモデルを作成し、「これを飾って実車は手放した方が良いのでは」と、提案したことも。

普段ゴルフ場への脚としているのは、3人分のゴルフバッグが積める日産リーフ(2016年製)。走行距離は3年で3万キロを超える。電気自動車なので経済的なのはもちろんだが、リーフの最大の魅力は、「低重心で加速がよいこと。実はスポーツカーなんです」と電気自動車の魅力を語る。次のクルマとして考えているのも、ポルシェのEVカー、タイカンだとか。「もっとも電気自動車は、音がしません。924はリーフよりも遅いですが、エンジン音のお陰で加速感が違う。そうした面も含めて好きですね。手放すことはないでしょう」

建物の西側にある7台分の駐車スペースは、年に数度大勢の親族が集まる時にも対応。この塀の裏に、親族用の第二玄関が設けてある。奥の左が2階建ての母屋で、右が平屋の離れ。その奥に見える高い木は、建て主の森さんと同じ樹齢のソメイヨシノ。車幅が1.7mに満たないポルシェ924Sは、リーフと並ぶと相当に小さく見える。
離れには日産リーフから電気を供給するシステム、「リーフ・トゥー・ホーム」の設備が備わり、いざとなれば2日ほどは家族が生活できる電気を供給。

一族の「本家」を建てる

そんな森さんの住まいは、横浜市でも鉄道の駅から離れた、クルマでの移動が中心となる住宅街。息子さんとの二世帯住宅で、暮らす大人は4人だが、クルマは6台もある。そもそも森家はこの土地に長い旧家だ。長男の森さんと3人の姉妹が生まれ育ったのもこの場所である。代替わりを期に、老朽化した先々代の建てた家を、森さんと三姉妹が協力して、一族の「本家」として建て替えたのが今の森邸だ。正月やお盆など年に数回、40名以上の親族が集まるため、本家には広大なスペースが求められる。そのため、普段生活する人数と比べ、家は大きなものとなった。

1階が父親世帯、2階が子供世帯の二世帯住宅。古くからの日本庭園をそのまま残し、緑豊かな景色を楽しめるよう、南面は全面ガラス張りに。2階の建物を半周するバルコニーの手摺もガラス製にしてある。モダンな建築だが、伝統的な日本家屋のように庇を長くとっているので、夏は暑くないうえ冬は暖房のいらない温かさだという。周囲の街並みに溶け込むように意匠を配慮。

ところで、この家の2階に所帯を構える息子の裕司さん(34歳)は、スポーツカーよりもミニバン派である。これまで3台の日産エルグランドを乗り継いできた。しかも、できるだけオリジナルの状態で乗る父親と違い、内外装にカスタマイズを施すタイプである。仲の良い親子だが、自動車を見る限り趣味は正反対だ。そんな息子さんと二世帯住宅を建てる際、建物の趣味も合わないのではと心配したと森さんは話す。だがそれは杞憂に終わった。数年前のこと。新居を設計する建築家を探すため、森さんは父親の代からお世話になってきた工務店を訪れた。有名建築家との仕事の多い地元の会社で、同社には50名以上の建築家の資料が並ぶ。親子それぞれが好みの建築家をリストアップしたところ、なんと2人とも同じ建築家を選んだのだ。

それが端正で上品な作風で知られる田井勝馬さんである。森さんは、この趣味の一致を大変喜んだ。ひょんな事から家業を継ぐことになったが、森さんは大学で建築を学び建築家を目指していたため、建築への造詣が深い。細かなことに口を出して、凡庸な建築にならないよう、田井さんにはできるだけ自由にと設計を依頼したという。一方田井さんは、家族の歴史から各人の希望まで、時間をかけて丹念に聞き出し、2年前に完成したのがこの家である。

まず、長い年月をかけて作られてきた、庭や石積みの玄関アプローチはそのまま残した。そして、旧家に相応しい品格を保ちつつも、これから息子の裕司さんやお孫さんが長くこの家で暮らすことを考え、コンクリート・ガラスといった現代的な素材を用い、年数を重ねても魅力が色褪せないデザインにまとめている。

ガラスで覆われた玄関も、開放的に来訪者を迎え入れる工夫が。

二世帯住宅の境はガラス

特にガラスを多用し、伝統的な日本の旧家とは反対の開放的な家としたのは、田井さんの意図したところ。それがよく表れているのが、来客を迎え入れる玄関周りだ。まず、玄関の壁がガラスで、オープンな雰囲気がある。そこから中に入った玄関ホールで、上下二つの階に分かれた、それぞれの家に続く構造に。階段を上がった先の、2階の裕司さんの家と玄関ホールを間仕切るのもガラスの壁だ。玄関ホールの奥には、森さんのお客様の来訪があった時に応対する、応接スぺースが設けてある。

ガラス越しに雰囲気を察し、2階から応接に降りていけば、裕司さんはいつでも、森さんの仕事(時には人脈)の輪に加わることができる仕組みだ。こうした設計上の配慮は、家族でビジネスを営む森家にとって、極めて有用なものだろう。

森邸の玄関は二世帯共用で、階段を上った先の息子世帯と玄関ホールは、ガラスの壁で仕切られているだけ。この階段は、森さんの好きなデザイン。杉板の跡が残るコンクリート壁の奥が応接。
茂徳さん由紀子さん夫婦が居るのは、玄関脇の応接。
リビング・ダイニングは、大人数が集まることに対応した大空間。
2階の裕司さん世帯のリビング・ダイニング。天井は屋根の傾斜に沿った形状で、木材が張られ温かみのある雰囲気。日常生活に必要なものをできるだけ隠せるよう、右手は大容量の収納になっている。左手は、一面ガラス窓。

離れを設けたのは、将来森さんが隠居した際、そちらに移って暮らすことを想定して。その時、新たに当主となった息子の裕司さん家族は1階に移り、お孫さん世帯は2階で暮らすことを考えての設計となっている。因みに森さんのお孫さんはスポーツカー好きで、普段は閉まっている924用のガレージの「シャッターを開けてクルマが見たい」とせがむ男の子だ。隔世遺伝だろうか。幼稚園児だが、「映画『カーズ』のクルマにも詳しい」と、森さんは嬉しそうだ。やがてその子が、森さんのポルシェ924を運転する日がやってくることだろう。

■建築家:田井勝馬 1962年香川県生まれ。日本大学理工学部卒。戸田建設を経て独立。直線を基調とした、端正で上品な住宅で知られる。写真は代表作のひとつ。クルマも直線的なデザインが好きで、GクラスAMGとSL(1995年製)のメルセデス2台持ち。

文=ジョー スズキ   写真=山下亮一

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