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CULTURE 2019.7.3 

三谷かぶき『月光露針路日本』を鑑賞した。三谷演出に酔った!

いままで歌舞伎を一度も観たことがなかった本誌記者が、三谷幸喜作・演出の新作歌舞伎を歌舞伎座で鑑賞した。心の底から感動して、いまや歌舞伎の世界に興味津々。

歌舞伎俳優をテレビで見ることはあっても、歌舞伎の演目を鑑賞したことはなかった。日本の伝統芸能である歌舞伎は形式美を楽しむもので、それにはまず演目を事前に勉強しなければならないような気がしていたからだ。それでも、歌舞伎座の前をクルマで通ると、この派手な劇場のなかにいつか入ってみたいと思っていた。そんな私がインターネットで偶然見つけたのが六月大歌舞伎・夜の部「三谷かぶき」だ。映画やTVドラマで多くのヒット作を生んだ脚本家、三谷幸喜作・演出の『月つき光あかりめざすふるさと露針路日本』、これなら門外漢の私でも楽しめるかもしれないと、初めて歌舞伎座の中に足を踏み入れた。

まげ姿の歌舞伎俳優たちがどういう所作で舞台に姿を現すのだろうと思っていると、スーツ姿の尾上松也が「はーい!いよいよ始まるよ~!」のセリフとともに登場。これから始まる演目の前説を始めたのである。会場をひとつにする口上は素晴らしく、面白い舞台になる予感はこの時点でほぼ確信に変わった。

物語は伊勢の船頭、大黒屋光太夫とその仲間たちが神昌丸で江戸に向かう途中で遭難、アリューシャン列島の小島に流れ着き、そこからロシア大陸に渡り、最後はサンクトペテルブルクで女帝に謁見、やっと日本への帰国を果たすという史実に基づいたものだ。

上の犬ぞりの写真は、光太夫一行がヤクーツクからイルクーツクへ移動するシーンなのだが、犬の動きがなんともユーモラスで会場は爆笑となった。ストーリーの本筋ではないところにも三谷演出のスパイスが効いている。

後席の男性は「こりゃ、もう歌舞伎じゃねーな、ガハハハ!」と笑っていたが、そんな狭い了見を吹き飛ばすほど素晴らしかったのは、この演目に関わる俳優、三味線、浄瑠璃の人々の芸である。超一流のプロが作り上げる舞台は一部の隙もなく、私はいつしか光太夫たちと一緒にロシアを旅していたのである。

歌舞伎界におけるこうした新しい試みはほかにもあって、京都南座では8月に中村獅童がバーチャル・アイドル、初音ミクと共演する『超歌舞伎』が、12月には新橋演舞場で新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』が予定されている。敷居が高いと思っている人は、こういうものから歌舞伎に触れるといいかもしれない。三谷かぶきに心底感動した私もそのひとりで、次は昔ながらの定番が観たいと思った。歌舞伎座8月公演は三谷かぶきで素晴らしかった松本幸四郎と市川猿之助が『東海道中膝栗毛』に主演する。行きます!

物語は海に漂流する神昌丸甲板からスタートした。主要人物を演じた松本幸四郎と市川猿之助は、歌舞伎座「八月納涼歌舞伎(8月2日~27日)」2部で『東海道中膝栗毛』の主役を演じる。7月12日チケット発売。詳しくは歌舞伎座ホームページで。

歌舞伎座公演の予約先=チケットホン松竹 ℡.0570-000-489もしくはチケットweb松竹まで

文=荒井寿彦(本誌) 写真=松竹

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