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CAR 2019.7.2 

夢のような組み合わせ。サルデーニャ島でポルシェ911スピードスターに乗る。

356を祖とし、911としては930型ではじめて登場。以来993型を除く歴代911のファイナル・モデルとして投入されてきたのが〝スピードスター〞だ。その最新作はGT3ゆずりの4ℓ自然吸気エンジンと6段MTの組み合わせのみ。わずか1948台の限定となる991型の最終形態に、藤原よしおがイタリアで試乗した。

PORSCHE 911 SPEEDSTER

そもそもスピードスターは、北米市場の強い要望を受け、356の重いルーフとウインドウをカットし、装備を簡略化して誕生したエントリー・モデルだったが、運動性能の良さを活かしモータースポーツで大活躍。またスティーブ・マックイーンやジェームズ・ディーンなど、当代のスターたちに愛されたことでも知られるピュア・スポーツである。

今回、1948台限定で生産される991型の911スピードスターは、価格こそ安価ではないものの、精神的にはスピードスターの原点に立ち返ったモデルといえる。

ボディ・シェルは991型カレラ4カブリオレがベースだが、シャシーは911GT3そのもの。リア・アクスル・ステア、ダイナミック・エンジン・マウント、PTV、PSM、PASM、PCCBは標準装備だ。一方、4ℓNAユニットはGT3とまったく同じではなく、高圧フューエル・インジェクター、個別スロットル・バルブ付きインテーク・システムの採用で10 psアップの510ps/8400rpmを達成。さらに2基のガソリン・パティキュレート・フィルターにより欧州排出ガス基準EU6DGをクリアするなどの改良が施されている。

変速機が6段MTのみなのは「PDKより25㎏ほど軽く、7段MTに比べシフト・フィールが良い上に1速分軽量なこと」が理由だという。軽量化への執念は凄まじいもので、ボンネット、フロント・フェンダー、リア・フードをフルCFRP製としたほか、10㎏軽量な新型ステンレス 製エグゾースト・システムを採用。さらにエアコン、インフォテインメント・システムといった快適装備はオプション扱いという徹底ぶりだ。

ロックのみ自動で、あとは手動で 開閉するソフト・トップを開け放つ。ウインド・スクリーンがカブリオレより50㎜低いだけあって開放感が抜群だが、スポーツ・シートの着座位置が低いのとコクピット周りの空力処理が巧みなこともあり、風の巻き込みは最小限に留められている。

ひと踏みでためらいもなく9000rpmまで吹け上がる、素晴らしいレスポンスとサウンドを併せ持ったフラット6の感触は紛うことなきGT3のもので、0-100㎞/h加速4秒、最高速度310㎞/hというスペックに偽りはない。

場所をワインディングに移すと、911スピードスターはさらに活き活きと走り出す。試乗会場となった伊サルデーニャ島のワインディングは比較的荒い路面が多かったが、シャシーは「これでカブリオレから何も補強してないって本当?」と思うほどしっかりしていて頼もしい。それに加えリア・ステアと、各種デバイス、ミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2のバランスが素晴らしく、路面をがっちりと掴みながら510psのRRとは思えないほどナチュラルで軽快なコーナリング・ マナーをみせる。しかも6段MTのタッチが実に気持ちよく、意味もなく頻繁にシフトしてしまう。

それでいてタウン・スピードでの乗り心地も、クローズドでの居住性も良いのだから文句のつけようがない。まさに991の集大成と呼ぶに相応しいファイナル・モデルである。

往年の356スピードスター・レーサーをイメージした白ストライプの塗装(ゼッケン・サークルとサイド・レターはステッカー)が施される"ヘリテイジ・デザイン・パッケージ"はPCCBキャリパーが黒く、室内もコニャックのデュオ・トーン・レザーに。

低くスタイリッシュなトップを開けるにはダッシュボードのスイッチでロックを解除した後、手で軽いカーボン製リア・フードを開け、幌をワンタッチで折り畳むだけ。ボクスター・スパイダ ーに比べかなり簡略化されている上に耐候性も高く、閉じた状態でのヘッド・クリアランスも十分に確保。万一の際には"ロー・プロファイル・フライング・ライン"と呼ぶダブル・バブルのリア・フードからロールバーが飛び出すなど、安全対策も万全。日本市場での価格は未定。

文=藤原よしお 写真=ポルシェAG

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