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CULTURE 2019.7.1 

俳優引退を表明した永遠の二枚目 『さらば愛しきアウトロー』

アメリカ映画を代表する大物俳優、ロバート・レッドフォードの最後の主演作は、脱獄を16回繰り返した実在の銀行強盗の物語だ。

『明日に向って撃て!』(69)の成功で世界的なスターとなったロバート・レッドフォードには涼しい笑顔が似合う。同じアウトローを演じても、スティーブ・マックイーンのような荒々しさや、ポール・ニューマンのような哀愁を漂わせるわけではなく、その存在は常に爽やか。まさに“オール・アメリカンボーイ”の代名詞のような存在だった。 

そのレッドフォードも今年で83歳。ここ最近は年に1、2本のペースで映画に出演してきたが、自ら企画した『さらば愛しきアウトロー』を最後に、俳優稼業から引退することを宣言した。

本作でレッドフォードが演じるのは74歳の銀行強盗、フォレスト・タッカー。何度も逮捕されては、16回も脱獄を繰り返した実在の人物である。この人が異色なのは、ポケットに隠し持った拳銃で銀行員を脅しながらも、誰一人として傷つけなかったこと。そして被害にあったほとんどの人が、タッカーのことを「紳士だった」、「礼儀正しかった」と話していたことである。

かつて『ホット・ロック』(71)ではダイヤモンド泥棒を、『スティング』(73)では街の詐欺師をスマートに演じていたレッドフォードだが、鮮やかなブルーのスーツをさらりと着こなし、紳士然とした優雅な物腰で銀行強盗に及ぶ主人公は、まさにはまり役である。タッカーにとっての銀行強盗は金のためではなく、人生という名の冒険を楽しむための手段に過ぎない。そんな主人公を伸び伸びと演じているレッドフォードが心底、楽しそうなのもいい。

また劇中ではタッカーの若 かりし日の脱獄シーンが登場するが、ここで使われたのが20代のレッドフォードが脱獄囚に扮した『逃亡地帯』(66)の一場面。『追憶』(73)や『出逢い』(79)といったロマンチックな役柄もこなした二枚目らしく、13歳年下の名女優、シシー・スペイセクとの絡みも自然で微笑ましい。

半世紀以上にわたりファンを魅了し続けてきた、俳優レッドフォード。その花道を飾るに相応しい作品だ。

名演出家としても知られるレッドフォードは、『普通の人々』(80)でアカデミー賞監督賞 を獲得。映画づくりは今後も続けていくと思われる。本作の監督は『A GHOST STORY/ ア・ゴースト・ストーリー』が批評家から絶賛されたデヴィッド・ロウリー。共演者もオス カー俳優のシシー・スペイセクやケイシー・アフレックと豪華だ。93分。配給ロングライド。7月12日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

文=永野正雄(本誌)

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