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PLAYING 2019.6.13 

愛車は黄色のランドローバー。クリエイター家族が住む世田谷ムーミン・ハウス/クルマと暮らす22

いろんな制限のある都市住宅だからこそ夢があって欲しい。世田谷の家は、家もクルマも住む人の楽しい夢であふれている。

やはり色がないと

都会の街にはそれぞれの個性がある。場所ごとに雰囲気も違えば、住む人も大きく異なるものだ。映像作家のM・Nさん(38)とぬいぐるみ作家のMさんのお宅があるのは、文化に関心の高い住人が多いことで知られる街。そんなエリアの、白い建物がひしめくように並んだ通りで、二人の青い家は目立った存在だ。かつて赤と白の縞模様の家を建てた漫画家が、近所の住人ともめたことがあった。念のためNさんたちが近隣に挨拶に伺ったところ、「クリエイターさんなのね」と、あっさり理解を示されたとか。このように異なる文化を受け入れる懐の深い街に、N邸は建っている。

ご主人のMさんは、ももいろクローバーZのプロモーション・ビデオや、NHKと共同で制作した東京駅のプロジェクションマッピングなどで知られる映像作家だ。「色を使わないとトキメカない」と口にする通り、業界では色をよく使う監督として知られている。好きな建築家も、モダンなスタイルの住宅の壁を、青やピンクに塗ったメキシコのルイス・バラガンである。

この家を設計した建築家の小長谷亘(おばせ・わたる)さんは、たたき台となる素案を出した時に、Nさんが色に関心が高いことに気が付いた。以来提案は、当時の所有車のアルピーヌV6ターボと同じ青とした。一旦青い外壁のプランが出てからはそれが当然のものとなり、変更することなく竣工を迎えている。

「デザイン優先」は建て主の主義。ベランダは幅1m未満の制限があるが短いと美しくないので、尖った形にして、先端の床を張らずに法律をクリア。
N邸に飾られていたムーミン一家の3階建ての青い家は、この家とそっくり。
日当たり抜群のリビングルーム。天井高は3m近い。チワワの名前は「あお」と「もの」。犬用のタイルカーペットを敷いたリビングの床面は、フローリング面と高さが合うように設計されている。動物のオブジェも多い。
棚にはMTVビデオ・ミュージック・アワードのトロフィーが。

実は小長谷さん、一回目の打ち合わせで、奥さんが「ムーミンのような家が欲しい」と口にしたのをずっと覚えていた。アニメの「ムーミン」で、彼ら一家が住んでいたのは、狭い面積に建つ3階建ての、外壁が青く塗られた家。Nさんたちの家も、50㎡の敷地に建つ、青い外壁の3階建て。両者はそっくりだ。建て主たちがムーミン家のことをすっかり忘れていたのは、小長谷さんの提案がもっと魅力的だったからだろう。

ところで、フランスのスポーツカーに乗っていた人物が、過酷なラリーで活躍した、黄色のランドローバー・ディフェンダー・キャメルトロフィー仕様に乗り換えたのは何故か。単純に、アルピーヌが動かなくなったからという。その前に乗っていた赤いシトロエンCXも、よく止まったそうだ。奥様の次のクルマへの要望は、「止まらないクルマ」。Nさんは、ディフェンダー(2015年型)を改装したクルマで、楽々と課題をクリアした。

愛車は、ホイールベース110インチのランドロ-バー・ディフェンダーをキャメルトロフィー仕様に改装したもの。ピンクに塗られた駐車スペース。前所有車のアルピーヌに合わせたサイズだが、ディフェンダーでもギリギリ駐車は可能。生涯ずっと左ハンドルのクルマに乗るつもりだったので、右側に余裕はなく、乗り降りするのが左のドアからなのは計算違いだとか。

ディフェンダーで仕事場にも

改装は、スコップやステッカーなど、純正パーツをイギリスから取り寄せた本格的なもの。このクルマでキャンプにも出かけている。アルピーヌが修理に出ている間、代車のカングーで何度かキャンプを体験していたのは内緒の話だ。

だが、それだけではない。ランドローバーに乗り換えて、日々の運転が楽しいという。Nさんは、毎日一回は運転したいタイプ。都心の仕事場にも、いつもクルマで出かけている。クルマは「絶対に外観のデザイン重視。どこかファッションに似ていると思います。代車で冴えないクルマしか借りられなかった日は、誰にも会いたくなかった」そうだ。

愛犬のために戸建てに

ところで、住宅街の賃貸物件に住んでいたNさんたちが、戸建て住宅に住むことを選択したのは、愛犬のことなどを考えて。犬の散歩ができる公園までちょっとの距離で、高速道路のインターチェンジも近いこの街に土地を見つけた。そして、施工をお願いした地元の工務店から何人かの建築家を紹介され、「センスが良く」「感覚の近い」小長谷さんに設計を依頼したのである。

Nさんの家の外壁の青い色は、特別に調合して作ったもの。2階のリビングの壁も、一部この色を塗っている。ガルバリウム素材の青い屋根は、壁面の青に近い既製品を利用した。ガレージの内部と階段の柱はピンク。キッチンも既製のものだが、オレンジの色を特注しだ。

注目すべきは屋根の形。敷地面積が限られるうえに高さの規制が厳しく、それをクリアする過程でデザインが決まっていった。3階の寝室や奥様のアトリエ、トイレの天井には、複雑な形をした三角の屋根の形がそのまま表れている。

そして2階は、リビングダイニング・キッチンのスペース。3階の天井高との関係で、奥のキッチンとダイニングの天井は低い。一方、リビングの天井は3m近くとってある。床面積はそれほどでもないが、天井の高さに変化があるので、逆に広さを感じるものだ。2階の天井の高さの違いは、そのまま3階の床面の位置に表れ、寝室はアトリエよりも数十センチ高い場所にある。

3階には、ぬいぐるみ作家の奥様のアトリエが。黄色いのが、作品の「ケダちゃん」。
 
ダイニングは低い天井を勘案し、天井から吊るすタイプの照明ではなく、壁付のものを特注した。テーブルとベンチは、美術さんにお願いしたもの。
3階のベッドルームの天井には、屋根の形がそのまま表れている。

趣味が充実する家

1階の玄関脇は、Mさんのオフィスだ。落ち着くようにと、あえて光が入らない狭い空間にした。ここは土足で入る部屋。来客対応や、出先から戻ってそのまま働くためではない。家で仕事をする時、靴に履き替えることでモードをOFFからONに切り替えるのだ。そして壁には、趣味のミリタリー・グッズが美しく陳列されている。長年コレクションしてきたもので、マニアも羨むお宝も多い。

「自分の家なので、壁に穴を打ってフックを設置し、陳列できるのがいいですね。賃貸時代、こうした趣味の道具は箱に入ったまま保管されていました。自分の家ができて、趣味が充実してきたものです」。

玄関脇には愛犬グッズが。ご主人の仕事部屋には、趣味のミリタリー・グッズが飾られている。

また、この家に移ってチワワは一匹増え、仲間が増えた先住ワンコは、前より楽しそうに過ごしているとか。何より「自宅なので、吠えても気にならなくなった」のが大きい。N家は二人ともクリエイターで、センスは折り紙付き。犬用のグッズも、オブジェのように美しく壁面にディスプレイされている。そのうちのひとつである、カワイイ犬用品の作家さんとインスタグラムでつながっていたところ、最近になってN邸から徒歩一分の距離に住んでいることが分かった。この街には、様々な職種の文化的な人たちが住んでいるのだ。そういった意味でも、都会に住むのは面白い。

■建築家:小長谷亘 1975年 東京生まれ。 東京理科大学大学院修了。手塚建築研究所を経て独立。住宅だけでなく、病院や商業施設も手掛ける。代表作となる写真のあだち内科クリニックでグッドデザイン賞を受賞。世田谷区の家にも関わった照明デザイナーの内藤真理子は、公私にわたるパートナー。内藤氏の父親は長年のENGINE読者で、VWゴルフ党とか。

文=ジョー スズキ 写真=山下亮一

(ENGINE2018年3月号)

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