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PLAYING 2019.5.8 

愛車はBMW320ツーリング。真ん中のキッチンに人が集まる家/クルマと暮らす19

戸建て住宅で子育てしたい

川崎市の等々力競技場のある公園緑地にほど近いTさん(45歳)達のお宅。この家の中心となるのは、吹き抜けになった広々としたキッチンだ。開放感のある居心地のよい空間に身を置いていると気付かないが、土地は62㎡しかない。都会では珍しくないサイズだが、地方に住むTさんのお母様は価格を聞いてから更地を見て「騙されているのでは」と疑ったほど。昨今共働きの勤め人といえども、都会に戸建を持つのは容易ではない。こうした限られた面積の土地に、狭さを感じさせない魅力的な家を建て、車幅180㎝のBMW320ツーリング(2007年型)と、バイクのカワサキ・ゼファー1100RS(1996年型)のスペースを確保できたのは、建築家の力だ。

広々としたキッチンと、日よけのテントが大きな特徴のT邸。テントは角度を変更できるだけでなく、巻き上げも可能な電動のもの。テントの具合で、家がウインクをしているように見える時も。

そもそもTさんはバイク党である。16歳で乗り始め、何台か乗り継いだ後、新車で手に入れたゼファーを21年間所有し続けている。クルマに乗るようになったのは働き始めて。最初は1967年型のビートルに。エアコンの無いMT車で、結婚前に奥様とデートをしたのはこのクルマだ。「当時妻は一言も口にしませんでしたが、ガソリンが臭うし、振動が激しく夏は暑いうえに故障でしばしば止まったので、ビートルを嫌っていたことを結婚してから知りました」今このクルマは、実家でお兄様が乗っている。そして結婚して乗り始めたのが奥様も運転できるATのフォルクスワーゲン・ゴルフ。子供が生まれた際、荷物が積めて、走りと顔のデザインが気に入った今のBMWに乗り換えた。週末のお出かけや子供の送迎だけでなく、用具を載せてキャンプに出かける時にも活躍している。11年間で走行距離は7万キロほど。古いモノが好きで、気に入ったものは長く使い続けるのがポリシーのTさん。このクルマも、できるだけ長く乗っていくつもりだという。奥様も運転が好きで、「遠出をする時は、どちらが運転するか言い争い」になることもあるそうだ。

そんな夫婦が家づくりを決意したのは、子供を授かってから。「私たちは地方出身で、実家は戸建住宅でした。子供にも同じ体験をさせたい」と話す。

広く感じる設計

設計は、奥様の同級生である建築家の松井亮さんに依頼した。建築家に土地探しも協力してもらい、見つけたのが、静かで公園に近い子育てに適した今の場所だ。もっともこの土地は西側が道路で、その他は隣家と接しているので、午後の日差しが強い西がメインの採光になる。しかも土地は広くない。ここで親子3人が気持ちよく暮らせるように建築家が考えた間取りは、縦列駐車のパーキング。そして1階は夫婦の寝室と水回り。2階の西側に、家の中心となる吹き抜けのキッチンを配し、中2階にリビングとTさんの希望した書斎。ダイニングは、書斎の下の少し天井の低い空間。そして3階が子供部屋という、無駄のないレイアウトである。

キッチンの採光は、西側の壁の少し高い位置に設けた、2m四方の大きな窓が中心。道ゆく人から家の中が覗かれない構造である。さらに道路に面した全ての窓に、電動の日よけテントを設置。午前中、全て巻き上げてしまえば室内は明るく、午後にテントを出せば西日を遮ることができる。夏でも2階以上の部屋は、エアコンひとつで涼しいというのだから、テントの効果は大きい。実は2階以上の部屋は、キッチンの吹き抜けに面して大きな開口部が設けられているうえ、部屋に扉が無く、大きなひとつの空間になっている。この構造のため、風だけでなく視線も抜け、面積以上に広さを感じるのだ。

高い所で6mを超えるキッチンの吹き抜け。視線が抜け、広さを感じる設計となっている。頁中央の写真では、右手の開口部の下がリビングで上が子供部屋。左手は下がダイニングで上が書斎。

特に家の中心となるキッチンからの眺めが気持ちいい。背の高い観葉植物と、美しくデザインされたキッチン周りと相まって、どこかカフェのような雰囲気だ。他にも建築家の松井さんは、家が広く感じられる工夫を数多く行っている。例えばキッチンより少し高い位置にあるリビングの下は、全て収納に。リビングとキッチンとをつなぐ開口部の縁は、右頁の写真のように、座れるような幅と高さで設計。リビングのソファーも、少し小さめの部屋に上手く納まる特別なものを、松井さんがデザインした。

階段も広さを感じられるよう、視線が抜ける意匠に。階段室の扉奥は、めったに使わないキャンプ道具などの収納。
Tさんはバイクに乗るうえ、趣味のロックバンドでベースを弾いていたので、書斎には数多くの革ジャンが飾られている。

この家ができて、料理好きの奥様は、アイランドキッチンを囲んで友人たちと食事会をする機会が増えた。そして等々力競技場の近くに住むほどサッカーの川崎フロンターレが好きなTさんといえば……、以前は一人で応援に行くことも多かったが、今はTさんの都合が悪い時でも、奥様とお子さんだけで応援に行くようになったと喜んでいる。お子さんにとっても、この家は記憶に残る「実家」となるに違いない。

■建築家:松井亮 1977年滋賀県生まれ。東京藝術大学大学院を修了後、自身の事務所を開設。住宅設計だけでなく、商業施設の設計や家具デザイン、舞台美術にインスタレーションなどと幅広く活動。作品には独特な美意識が表れている。写真は、今年竣工しGマークを獲得した木造校舎「自由学園みらいかん」。

文=ジョー スズキ 写真=山下亮一

(ENGINE2019年1月号掲載)

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