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PLAYING 2019.5.6 

ブロックを積み上げたデコボコハウス。内装はDIYと植物で/クルマと暮らす17

まるで大きく枝を広げた樹のようなカタチが印象的な新潟の藤井邸。しかも将来は樹が成長するのと同じように階を増やすことも可能だというから驚いた。

インテリア好き夫婦の相棒はエクストレイルとカングー

ひと目で1、2階よりも3階が広く張り出しているのが分かる、藤井鷹(34歳)さんたちのお宅。角は全て直角で、直線だけで構成された独特な形をしている。それもそのはず。各階20×40㎝のブロックを10段積み上げる、少し珍しい工法で建てられているのだ。藤井邸があるのは、新潟駅に近い、近年になって開発された住宅地。袋小路に沿って8軒並んだ一番奥だ。一人がクルマ1台を所有しているのが一般的な地域で、玄関前には藤井さんの日産エクストレイル(2008年型)と、奥様である綾子さんのルノー・カングー(2009年型)が停められている。

一階のエントランスの土間は、お洒落な美容室のような雰囲気。素敵なインテリア空間は近所の子供たちにも人気で、引き戸を開けて上がりこみ、自由に遊んでいることもあるとか。

この家で暮らし始めて、藤井さんが始めたもののひとつがガーデニング。玄関脇の植栽も手がけた。北陸で最大級のボタニカルショップに出かけ、エクストレイルに植物をどっさり積み込んで帰ってくることもある。そのため、「職業を知らないご近所さんから、園芸家と思われている」とか。ちなみに藤井さん夫婦は、病院で働く技師と看護師。ご主人が奥様に夢中になった理由のひとつが、当時「お洒落な」プジョー1007に乗っていたから。そして小ぶりで取り回しが楽な初代カングーとの生活も、6年目を迎えている。この家から20分もクルマで走れば格好のサーフィンのポイントがあるのが新潟の良いところ。藤井さんはエクストレイルにボードを積んでよく出かけている。時には、家族でアウトドアライフを楽しむことも。今年の夏休みは関東の友人を訪ね、千葉や茨城の海でサーフィンを楽しむだけでなく、「テントを手に入れたので、テント泊を体験する予定」と話す。そんなアクティブな藤井さんは、新しい相棒として「都心でも走りやすい、5ナンバーで7人乗りの、トヨタ・ランドクルーザー・プラド」を次のクルマとして検討しているそうだ。

さて、若い頃からインテリアに関心が高い奥様。ところが二人で暮らし始めた頃のご主人のセンスはそれほどでもなく、藤井さんの使っていた家具や食器は全て買い替えられてしまったとか。それが今は、インテリア誌を愛読するように。そんな二人は、早くから家作りを検討していたが、住宅展示場巡りをしてもピンとくるものがなかった。ところがテレビ番組「たてもの探訪」で、自分たちの好みの家を発見する。住宅などの構造計算を生業としている構造家の寺戸巽海さんのお宅だ。調べてみると、寺戸邸を設計した建築家の篠崎弘之さんとの協業で、魅力的な住宅を数多く世に送り出していることが分かった。こうして篠崎・寺戸チームに家作りを託したのである。

荒々しいブロックが内装

藤井さん夫婦は、雑誌記事から好みの空間を集めたスクラップブックを制作。住みたい家のイメージを篠崎さんたちに伝えた。そして完成したのが、既存のブロックを積み上げ、それがそのまま内外装になった家だ。インダストリアルなインテリアが好きな夫婦にとって、整ったコンクリート打ち放しよりも、荒々しいままの壁は断然好みである。この工法でコストを抑えられる訳ではないが、室内空間が大きくとれるうえ、5階建まで建てることが可能だ。藤井さんたちは、近隣の7軒の家が出来上がる様子を見つつ、家作りを行っていった。ブロックを積み上げる工法ゆえ、玄関を予定していた南側が隣家と近いと分かると、すでに基礎のコンクリートは打っていたものの、ガレージ側に玄関を変更することができた。間取りも、建てながら相談して決めた。こうして完成したのが、2階建ての住宅が並んだ街に建つ、眺めの良い3階に大きなリビングダイニングのある家だ。

照明類は自分たちで選び、DIYで天井のコンクリートにフックを打ち込み、植物を吊った。緑があることで、荒々しいブロックの壁などが作り出すインダストリアルな雰囲気がより際立つことに。
バスルームの扉を開けると、バルコニーに出ることができる。
それぞれの部屋は天井が高く空間に余裕があるので、頻繁に模様替えを行うのも納得。
屋上には、3階のバルコニーから梯子で。

ガーデニングだけでなく、この家で暮らし始めて藤井さんたちのライフスタイルは大きく変わった。まず、頻繁に模様替えを行うようになった(そのため平面図と取材時の家具の配置は異なる)。そしてDIYで棚を作ったり、フックを取り付け植物を吊ったり。そしてこの家を設計している時には居なかった、二人の子供を授かる。二人目が生まれた際、藤井さんは、「事故があっては」と乗っていたハーレーを手放した。その代わり夫婦で楽器を始め、音楽教室に通っている。奥さんはサックスで、ご主人はトランペット。家の中で練習しても、厚いブロックの壁なので、近所に音が漏れる心配はない。「楽器を始めて、子供が音楽好きになった」とか。他にも夫婦で楽しみたいことが山ほどあるそうだ。

もっとも将来子供部屋をどうするかは、まだ決まっていない。実は藤井邸、色々と拡張できる構造になっている。普通に部屋を間仕切るだけでなく、バルコニーを室内にしたり、壁を抜くことも可能だ。そればかりか、梯子を上った屋上に新たに部屋を設けることだってできる。もっとも、今の屋上は、花火を楽しむのに最高の場所。しかも床はしっかりとした防水が施され、水道の蛇口も用意されている。ご主人は話す。「屋上には木々が生い茂るちょっとした庭を作ろうと考えています。大きなものは運べないですが、時間をかけて植物が成長したらいいなと。すでにオリーブの木を2本持っていきました。子供部屋にするのもひとつの選択肢ですが、子供と一緒に暮らす期間は案外短いですからね。長くこの家での生活を楽しもうと思っています」。可能性に満ちた藤井邸での生活は、豊かさに溢れていた。

■建築家:篠崎弘之 1978年栃木県生まれ。東京藝術大学大学院修了。伊東豊雄の事務所を経て独立。個性豊かな住宅を数多く手掛ける。絶えずチャレンジングな試みを行っているので、設計した家はバラエティ豊か。住宅だけでなく、那須のワイナリーや犬吠埼の商業施設、都心の集合住宅など、規模の大きな建物の竣工も控えている。

文=ジョー スズキ 写真=山下亮一

(ENGINE2018年11月号)

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