■真っ白なキャンバス

 生物種がどのように共存するかを理解することは、生物学における最大の難問の一つとなっている。その理由は特に、実験のための対照環境を見つけたり構築したりするのが難しいからだ。

 だが、プリングル准教授と研究チームは、カリブ海(Caribbean Sea)の16の島々が連なる列島という形で解決策を見いだした。この列島に生息するブラウンアノールとして知られる目立たないトカゲは、主に地面や木の下枝で狩りを行う。

 この列島は、侵略的外来種となる別種のトカゲが持ち込まれた場合に、在来種のブラウンアノール個体群がどのように反応するかを観察するのにうってつけの、真っ白なキャンバスのようなものだ。

 研究チームは次の四つのシナリオを調査した。一つ目は、在来個体群をそのままにしておく対照グループの島々。二つ目は、樹上生活をするトカゲのグリーンアノールを競争相手として持ち込むグループ。三つ目は、ゼンマイトカゲと呼ばれる最上位の捕食者を持ち込むグループ。四つ目は、これら両方の新外来種を在来のブラウンアノールの生息環境に侵入させるグループとした。

 まず、地上生活のブラウンアノールと樹上生活のグリーンアノールがうまく共存できるかどうかを確かめる実験を行ったところ、可能であることが明らかになった。グリーンアノールは個体数が急速に増え、ブラウンアノールの個体数は対照グループの島々ほどには増加しなかったものの、拡大を示した。

 最上位捕食者で地上生活をするゼンマイトカゲを導入すると、地上生活のブラウンアノールの個体群の行動に変化が生じた。ゼンマイトカゲは、ブラウンアノールとその獲物の両方を捕食する可能性がある。

 ブラウンアノールは樹上を好むようになり、ゼンマイトカゲの攻撃が及ばない範囲にとどまるために、通常の狩猟場の大半を放棄した。その結果、ブラウンアノールの個体数は増加せず、少なくとも変化なしのままとなった。