■検閲と監視カメラ

 2012年に習近平(Xi Jinping)氏が政権の座に就いて以来、中国政府は市民的自由の余地を大幅に縮小させてきた。2015年には人権派弁護士らを、またこの1年間ではマルクス主義の学生らを一斉検挙している。

 また検閲当局は、ソーシャルメディアに対する取り締まりを強化している。数百万人の活動を監視し、1989年の天安門事件で実際に何が起きたかなど、政治的にデリケートな資料の公開などを阻止している。

 天安門事件から30年の節目を前に政府は4月、事件の詳細が記載されているオンライン百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」の全ての言語版への中国国内からのアクセスを遮断した。

 天安門事件を受けて人権活動家となった理論物理学者の蕭強(Xiao Qiang)氏は、警察国家としての中国の新たな武器は、電話の話者特定を可能とする音声認識ソフトウエアと、大規模なDNA収集プログラムだと指摘する。

 2013年から16年まで投獄されていた、ある反体制活動家は「市民活動の範囲が狭められている」と語る。ホテルや交通機関の予約さえも、個人の追跡・特定に使用され得るという。

 さらに中国政府は2015年、「鋭眼(Sharp Eyes)」と呼ばれる監視プロジェクトを開始した。これは「あらゆる場所に存在し、完全にネットワーク化され、常時稼働・完全制御されている」、顔認証技術と組み合わされた大衆監視ビデオシステムだと説明されている。

 英情報調査会社IHSマークイット(IHS Markit)によると、2016年の時点で中国の街頭や建物、公共の場などに設置された監視カメラの数は、約1億7600万台だった。一方、米国は5000万台だった。中国の人口14億人に対する監視カメラの数は、2022年までに27億6000万台に達すると予想されている。

 イスラム教徒を中心に推計100万人が強制収容所に拘束されているとみられる新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)では、少数民族ウイグル人の動きを追跡するために、モスクの内部や飲食店、その他の公共の場に監視カメラが配備されている。