■「ジャングルのおきて」

 こうした困難な時代によって、中近東の医療の中心地だったイラクの名声は砕け散った。

 ICRCのペーター・マウラー(Peter Maurer)総裁は、医師らに対する圧力は、医療の世界の基本理念を破壊するものだと指摘する。

 最近イラクを訪れた同氏は、「われわれが懸念しているのは、医療機関に対する直接的な攻撃だけではない」「病気の深刻さや緊急性に応じて患者を平等に治療し、家柄や民族、信仰に左右されないことを誓う『医の倫理綱領』に、部族主義や宗派心が入り込むことを懸念している」と述べた。

 医師らは今、身の危険を案じ、医療従事者が職場で武器を携行することを認める2013年の法律の施行を求めて通りでデモを行っている。

 一部の議員らは、医師らに対する犯罪を反テロ法に含めることを提案しており、可決されれば、そうした犯罪を犯した者に死刑が言い渡される可能性もある。

「法の支配はない。ここで通用するのは弱肉強食のジャングルのおきてです」。カマリ医師はそう話した。(c)AFP/Salam Faraj