【1月25日 AFP】侵入生物種の存在は、世界的に貿易が盛んになった数世紀前から知られている。だが中国が主導し、123か国を結ぶ新たな大規模交易路が、侵入生物種のかつてない拡大を加速する恐れがあるとする研究論文が24日、米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に掲載された。

 中国が5年前に提唱した「一帯一路(Belt and Road Initiative)」は、地球の約半分をカバーすることを狙いとした、アジア、欧州、アフリカなどを結ぶ広域経済圏構想。

 中国科学院(Chinese Academy of Sciences)のイミン・リ(Yiming Li)氏と中英の研究者らは、貿易額、気候、生息地などに基づき、新たな交易路で結ばれる世界の各地域が重なり合うモデルを開発し、816種の脊椎動物が持ち込まれ定着する可能性が最も高い場所を予測。侵入生物種が定着する危険性の高いホットスポット14か所を特定した。

 これらのホットスポットはすべての大陸にあり、インドネシア、ベトナム、フィリピンから地中海の一部、チリ南部、カリブ海地域に及んでいる。アフリカではアルジェリア、ナイジェリア、カメルーンといった気候が適している国々もリストに挙げられている。

 リ氏は「一番懸念されるのは、アジアと欧州をつなぐ6本の大経済回廊だ」と指摘する。交通量が多いために外来種が持ち込まれる確率が高く、しかもその土地の条件が外来種の生存に適しているという。

 研究者らによると、問題の解決法はコンテナの検査、積荷の中身の監視、検疫など生物多様性を守るためのプログラムの実施といった、バイオセキュリティーだという。

 米パデュー大学(Purdue University)のジェフェリー・デュークス(Jeffrey Dukes)教授(林学・自然資源学)は、この分析について「興味深い」としながらも、どの侵入生物種なのか、またどこにたどり着くかという詳細がないために、いくつかの点でやや粗雑になってしまっていると指摘する。

 同研究に参加していないデュークス教授は「この研究は警鐘を鳴らすものとしては重要だ」とし、「侵入生物種の根絶は非常に難しい。だが第一に問題が起きるのを阻止できれば、頭痛の種をなくすだけでなく、経費の節約と潜在的に種の保存ができるのだ」と語った。(c)AFP/Ivan Couronne with Qian Ye in Beijing