【11月9日 AFP】心的外傷後ストレス障害(PTSD)が、退役軍人へ及ぼす影響はどのようなものだろうか。

 米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のバーで7日、銃乱射事件が起き、12人が死亡した。南カリフォルニア当局は、現場で自殺したイアン・デービッド・ロング(Ian David Long)容疑者(28)を実行犯と特定した。ロング容疑者は元海兵隊員で、PTSDだった可能性があるという。

■規模は?

 何百万もの退役軍人が、戦争によってもたらされる特徴的な心の傷であるPTSDを患っている。

 PTSDの症状は、不眠から、うつ、パニック発作、フラッシュバック、いら立ち、自傷行為までさまざまだ。

 退役軍人のPTSD患者数は統計によって異なるが、米退役軍人省(VA)は、イラク戦争またはアフガニスタン戦争に携わった退役軍人の最大20%が罹患(りかん)していると推定している。また、ベトナム戦争の兵役経験者では、約30%がその生涯でPTSDを患っているという。

 PTSDの原因はさまざまだ。戦争の恐怖を目撃したことに対する反応として現れることもあるし、戦闘地域で常時、厳重警戒状態が続くことも一因となる。例えばイラクで兵士たちは、道端に仕掛けられた爆弾や奇襲に常に警戒を強いられていた。

 そして脳の過剰な活動を鎮めることは、戦闘地域を去った後も難しい。

■治療法

 治療法はたびたび変わっているが、一般的には、医師が抗うつ剤を処方する。

 退役軍人省は、各種の心理療法を頼ることが望ましいとしている。同省は2006年、患者が自らのトラウマそのものについて学び、それを処理する認知処理療法(CPT)などの治療法を臨床医に訓練する取り組みを始めた。

 退役軍人省は、退役軍人の過敏性を抑えるために、その他の方法も取り入れている。

 退役軍人省傘下の米国立PTSDセンター(National Center for PTSD)のポーラ・シュヌアー(Paula Schnurr)所長は、治療法はここ10年で大きな発展を遂げ、多くの症例で効果を上げていると述べた。

 PTSDという状態に対する認識も、過去数十年で改善した。20世紀に米国が関与した紛争に参加した退役軍人は、自分のトラウマを秘密にすることが多かった。だが、軍司令官らは今、PTSDについて語り、いずれかの兆候があれば支援を受けるよう兵士たちに促している。(c)AFP