■「二重負荷」

 クイーンズランド大学(University of Queensland)のカースティ・ショート(Kirsty Short)氏(化学・分子生物科学)はAFPの取材に「2009年に起きたインフルエンザの大流行について調べた結果、ある一定の病気(肥満や糖尿病など)の患者が感染症にかかると、入院したり死亡したりするケースが有意に高くなることが分かっている」と述べた。

 研究チームは、気候変動で深刻化する貧困国での栄養不良と富裕国での栄養過多とで、世界は深刻な疾患における「二重負荷」を経験していると警告する。

 地球温暖化は、別の形でも影響を与える可能性がある。

 デサント氏は、インフルエンザウイルスがもともとは鳥と関係していることを指摘しながら、地球温暖化によって、次の流行の発生エリアが変化する可能性があると述べる。「気候変動により鳥の渡りのパターンが変わり、潜在的な流行性ウイルスが新たな場所に運ばれ、ウイルスを運ぶ鳥の種類も増えることが考えられる」

 1918年のスペイン風邪では、感染者の約2.5%に相当する約5000万人が命を落としたと考えられているが、その多くは二次細菌感染によるものだった。後の大流行では、抗生物質がその感染をある程度防いだ。

 だが今日の世界では、多くの細菌が抗生物質に対する耐性を獲得している。

 ドハーティ研究所のキャサリン・ケンジェルスカ(Katherine Kedzierska)氏は、「これは、次に来る世界的流行の発生において二次細菌感染の罹患と死亡リスクを再び高めるものとなる」と指摘する。

 研究者らが特に警戒しているのは、感染すると致死率が約40%に上る鳥インフルエンザ(H7N9)だ。この株については、人から人への感染はないとされている。しかしデサント氏は、「現時点では、人と人との間で感染する能力を持たないが、ウイルスにわずかな変異があれば事態は一変する。そして新たな大流行ともなり得る」と注意を喚起した。(c)AFP/Patrick GALEY