【7月1日 AFP】2016年に世界で新たに発症した糖尿病の7例に1例は大気汚染が原因であるという研究結果を、米セントルイス(St Louis)のワシントン大学医学部(Washington University School of Medicine)のチームが発表した。わずかな大気汚染レベルでも糖尿病の発症リスクにつながるという。

 糖尿病は食生活や運動不足などの生活習慣が主な発症要因とされてきたが、ワシントン大学医学部の研究は大気汚染も糖尿病の大きな発症要因となり得るとしている。

 同大の研究に協力する米復員軍人援護局傘下の臨床疫学センターのチームは、糖尿病の既往歴のない米退役軍人170万人を対象に8年半かけて追跡調査を実施。大気汚染と糖尿病リスクの関連を調べるため、退役軍人らの患者情報を大気環境情報と比較したところ、糖尿病の発症リスクと大気汚染に「密接な関連がある」ことが示されたという。

 研究をまとめた論文によると、2016年に全世界で新たに発症した糖尿病の14%にあたる、320万症例が大気汚染に起因していたという。

 論文執筆者の一人、ジヤド・アルアリー(Ziyad Al-Aly)氏は「われわれの研究は、世界的に大気汚染と糖尿病の間には重大な関係性があることを示している」と語った。

 論文は、(大気)汚染によって体内のインスリン産生が低下するため、健康維持に必要な血糖のエネルギーへの変換が妨げられるとしている。

 専門誌「ランセット・プラネタリー・ヘルス(Lancet Planetary Health)」に掲載された研究の結果についてアルアリー氏は、世界保健機関(WHO)や米環境保護局(EPA)が現在、安全とみなしている大気汚染レベルでも糖尿病リスクは高まると警告。「これは重要なことだ。産業界の多くのロビー団体が現在の大気汚染規制は厳しすぎると主張して緩和を求めているが、現状の規制でも安全ではなく、むしろ強化が必要なことを示している」と語った。(c)AFP