【6月22日 AFP】米国の石油・天然ガス業界は、政府の公式推定値を60%上回る量のメタンガスを漏出させているとの研究論文が21日、発表された。この強力な温室効果ガスが環境に及ぼす影響について、論文は警鐘を鳴らしている。

 米科学誌サイエンス(Science)に発表された論文によると、米国の石油・天然ガス業界は年間約1300万トンのメタンを排出しており、これは米環境保護局(EPA)の推定量をはるかに上回っているという。

 研究チームによると、メタンの実際の排出量は天然ガス純生産量の2.3%(漏出率)で、これは1000万世帯に供給するのに十分な量の天然ガスに相当する。これに対し、EPAの排出量目録では漏出率が1.4%となっていた。

 論文によると、漏出したガスの金銭的価値は20億ドル(約2200億円)に上るという。今回の論文は、研究者140人以上からなるチームが、採掘現場への立ち入り許可や技術的な助言を提供した石油ガス企業50社と協力してまとめた。

 論文の共同執筆者で、環境保護団体「環境防衛基金(Environmental Defense Fund)」の主任研究員のスティーブン・ハンバーグ(Steven Hamburg)氏は、「今回の研究は非常に大きな問題を明るみに出しただけでなく、大きなチャンスが存在することも明らかにした」と指摘する。

「低炭素エネルギーへのより大規模な移行が続けられている中でも、石油天然ガス産業部門からのメタン排出量を減らすことが、今日の温暖化のペースを減速させるために実行可能な最も迅速でコスト効率の高い方法だ」

 専門家らによると、天然ガスの主成分であるメタンが及ぼす温暖化の作用は、20年間で二酸化炭素(CO2)の80倍以上になるという。

 CO2排出量が石油や石炭に比べて少ない天然ガスだが、そのエネルギー効率は、メタンの漏出を最小限に抑えられるかどうかに大きく左右される。

 一部の大手石油企業は、すでにメタン漏出の問題を認識して対応策を講じ始めている。

 英BPは、4月に同社初となるメタンの排出量目標値を設定。米エクソンモービル(ExxonMobil)も、5月にメタン排出量を削減する意向を表明している。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)やカタール・ペトロリアム(Qatar Petroleum)も、メタン排出削減についてすでに表明している。

 米政府の推定値と実際の排出量との間に食い違いが生じた理由について研究チームは、「誤動作などの異常運転状態の間に発生するメタンの排出が、既存の排出目録作成手法で捕捉されていないことの結果である可能性が高い」としている。(c)AFP