■「恐怖症」に近い

 仏ルーアン大学病院(Rouen University Hospital)の栄養科長、ピエール・ドシェロット(Pierre Dechelotte)氏によると「オルトレキシアという病名は一般的なもので、医学的には承認されていない」が、「制限的な食事に関連する障害」の部類に属するという。

 またドシェロット氏の見解では、男性よりも女性の方が2倍以上の確率でオルトレキシアになりやすいとみられる。

 一方、フランスとスイスで30年にわたって診療を行ってきた精神科医アラン・ペロー(Alain Perroud)氏はオルトレキシアについて、摂食障害というよりも「恐怖症(フォビア)に近い」と言う。従って他の恐怖症と同様に、間違った思い込みや強迫観念について語り合う他、リラクゼーション療法のような不安解消法などの認知行動療法で対処できるとペロー氏は考えている。

 一方、医療現場の外では、オルトレキシアという言葉が徐々に広がっている。

 米国人のブロガー、ジョルダン・ヤンガー(Jordan Younger)さんは、自分が不健康な生活への下降スパイラルに陥っていたときのことを「制約のバブル状態」だったと表現する。「完全なビーガン、完全な植物性食品、完全なグルテンフリー、オイルフリー、精糖や小麦粉、ドレッシング、ソースも一切なし」といった食事に取り付かれていたという。

 フランスの研究機関「生活条件調査研究センター(CREDOC)」のパスカル ・エベル(Pascale Hebel)氏は、食の安全に関する相次ぐスキャンダルも人々の不安をかき立てる原因の一つだと指摘する。欧州ではこの30年ほどの間に、狂牛病から最近の卵の殺虫剤汚染までさまざまな問題が起き、また抗生物質の使用や遺伝子組み換え(GM)食品に反対する声も高まっている。

 さらにドヌー教授によれば、オルトレキシアは自分がコントロールを握ることへの欲求を反映している。つまり食品が、健康に有害な欧米型ライフスタイルに対する薬代わりにされているという。「私たちは今、食文化の変遷期に生きている。自分たちが食べているものに対して根本的な疑問を抱くようになったのだ」 (c)AFP/Clara WRIGHT