【8月31日 AFP】米国は30日、患者自身の免疫細胞を用いて白血病の治療を行う同国初のがん遺伝子療法を承認した。今回の承認により、世界の死因の最上位の一つに位置するがんとの闘いに新時代が開かれたかたちだ。

 スイス製薬大手ノバルティス(Novartis)が開発したこの治療法には「キムリア(Kymriah)」の名前が付けられている。

「キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法」として知られるこの種の抗がん免疫療法は、これまで「CTL019(tisagenlecleucel)」と呼ばれていた。

 ノバルティスのジョセフ・ジメネス(Joseph Jimenez)最高経営責任者(CEO)は、記者会見で「CAR-T細胞療法の承認については、これが世界で史上初となる」と語り、「この治療法は患者自身のT細胞を使用することにより、完全にパーソナライズ化された最新のアプローチを採用している」と説明した。

 米食品医薬品局(FDA)は今回、急性リンパ性白血病(ALL)の25歳以下の小児・若年患者を対象とするキムリア療法を承認した。

 治療の適応条件は、難治性の前駆B細胞ALLの患者か、2回以上の再発がみられた患者となっている。

 FDAは今回の承認について、がんとその他の重篤で命を脅かす疾患の治療に新たなアプローチを先導する「歴史的行動」と表現した。

■治療の仕組み

 キムリア療法は、体の自然な防御機構を弱める恐れがある薬剤や一部の化学療法とは異なり、T細胞や白血球と呼ばれる患者自身の免疫細胞を利用し、がんを認識・攻撃させる。

 まず、特殊な血液ろ過処理で採取した患者の免疫細胞に遺伝子改変を加え、がん細胞を攻撃できるようにする。そして遺伝子改変を加えたT細胞を患者に体内に戻し、白血病への攻撃を開始する。

 ノバルティスによると、患者の83%がこの治療に反応し、T細胞を戻してから3か月以内に寛解を達成したことが、これまでの研究で示されているという。

 欧州医薬品庁(EMA)への承認申請は今年末までに提出される見通し。