■10年越しで見つけた答え

 論文の共同執筆者で、米マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)皮膚科部長を務める米ハーバード大学医学部(Harvard Medical School)のデービッド・フィッシャー(David Fisher)教授(皮膚科学)は「人の皮膚は非常に優れた障壁で、浸透させるのが大変に困難だ。そのため、他の局所的アプローチはうまくいかなかった」と説明する。

「だが、10年後に答えを見つけ出した。薬剤化合物群が違うのだ。別種の化合物群を使えば、色素沈着を引き起こすのと同じ経路に集中する別の酵素を標的として、有効に作用する」

 研究チームは、実験室に保存されていた人の皮膚サンプルで薬剤を試験した結果、塗布する量に比例して皮膚が黒くなることが分かった。この日焼けは数日間持続した。

 動物実験では、赤毛マウスが「強力な十分量の投与により、1~2日でほぼ真っ黒」になるのが観察された。塗布した薬を除去すると、通常の皮膚再生によって1週間前後で日焼けが消えた。

 フィッシャー教授は「今回の研究の潜在的重要性は、皮膚がん予防の新規戦略に道を開くことだと考えている」と指摘した。

「皮膚は人体の中で最もがんに冒され易い臓器で、症例の大半が紫外線に関連するとみられている」とフィッシャー教授は話した。

 長期的な目標としては、太陽光線への暴露なしで日焼けを生じるだけでなく、従来の日焼け止めのように有害な紫外線を吸収するクリームの開発が考えられる。(c)AFP