【4月5日 AFP】(画像追加)50万年近く前、現在の英国と欧州大陸をつないでいた地稜が幅数十キロにわたる巨大な滝によって崩壊し、巨大洪水でイギリス海峡(English Channel)がくりぬかれ、陸続きではない英国の島が形成されたとの研究論文が4日、発表された。

 地質学者の国際研究チームは、同業の専門家らを100年余り悩ませ続けてきた難問に今回の研究でついに答えを出したと主張している。

 研究チームが着目したのは約45万年前の氷河期だ。この時代には、北半球の大半が分厚い氷河に覆われ、海水位は現在よりはるかに低かった。

 この時代に関する仮説では、現在のイギリス海峡となっている所は乾燥寒冷で、ツンドラ(凍土帯)のような地帯だったとされている。

 この地帯には白亜質の堆積岩が隆起し、現在のドーバー海峡(Strait of Dover)の部分で英国と欧州本土をつないでいた。

 研究チームは、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表した研究論文の中で、現在の北海(North Sea)南部に当たる陸地を覆う氷冠の端と隆起した堆積岩の急斜面の間に内陸河川が流れ込んで巨大な湖が形成されたことを示唆している。

 この湖の水が地稜を越えてあふれ出し、幅約32キロ、高さ100メートルに及ぶ巨大な滝となって、はるか下方の谷に向かって猛烈な勢いで流れ落ちた。この「ダム」の頂上部分が滝で浸食され、やがて壁面に亀裂が生じて崩壊。その影響で発生した津波にえぐられて現在のイギリス海峡が形成された、というのが同研究チームの説だ。

 論文の共同執筆者で、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)のサンジーブ・グプタ(Sanjeev Gupta)氏は「(英南東部)ドーバー(Dover)と(仏北部の港湾都市)カレー(Calais)との間にあったこの地峡の崩壊は間違いなく、英国史上最も重要な事象の一つであり、今日でもなお、島国である英国のアイデンティティーを形作る要因となっている」と話す。