【3月9日 AFP】痛風の治療薬として米国で50年使われている一般的な薬が、炎症性腸管障害やクローン病の症状も緩和できる可能性があるとする研究論文が8日、発表された。

 米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)に発表された研究論文によると、パンを作る際に使われるイースト菌の一部菌株は、腸で炎症性腸管障害による痛みや下痢、けいれんを悪化させる恐れがあるという。炎症性腸管障害は、米国で約160万人が罹患(りかん)しているとされ、治療法は確立されていない。

 研究論文によると、「出芽酵母」として知られるこの菌を大腸炎を発症させたマウスに与えたところ、腸管内の状況が悪化し、さらに消化管内の尿酸値も上昇させたという。

 研究では次に、これらのマウスに痛風の治療薬「アロプリノール」を投与した。すると、腸疾患の改善を確認することができた。尿酸値を減少させるこの薬は1966年から一般的に使用されている。

 論文の主執筆者である米ユタ大学医学部(University of Utah School of Medicine)のジューン・ラウンド(June Round)氏はAFPに対し、一部の医師らはすでに痛風とクローン病の患者に対してアロプリノールを処方しており、その両方で症状を緩和していることを認識していたと語った。アロプリノールは、「ザイロプリム」や「アロプリム」といった製品名で市場に出回っている。

 ラウンド氏は、こうした観察に基づく所見については、臨床試験を通じてその効果を確認すべきとしている。痛風の治療薬としてこの薬がすでに米食品医薬品局(FDA)から承認を受けていることを指摘しながら、「患者への処方については、臨床医の判断になるのだろう」と述べた。(c)AFP