■mtDNAの「適合性」がカギ

 今回の最新研究では、この現象を回避する方法について調べた。

 その結果、卵細胞のドナーのmtDNAが、母親のmtDNAに「適合する」場合には、試みが不成功に終わる確率が低くなることが分かった。

 mtDNAは、それぞれが遺伝的に共通の祖先を持つグループに分割できる。これらのグループは、ハプロタイプとして知られる。

 論文の主執筆者、シュークラト・ミタリポフ(Shoukhrat Mitalipov)氏は「ハプロタイプの適切な組み合わせを確実に用いることで、疾患の原因となる遺伝子変異のない胚の産生に最大の成功率がもたらされることを、今回の研究は示唆している」と述べた。

 今後は、DNAの適合技術を開発するための研究を重ねる必要がある。臨床試験を開始できるのは、その後になる。

 だが、今回の論文の執筆者らの大半の出身国である米国では、ミトコンドリア置換法が禁止されているため、臨床試験を実施できない。

 ミトコンドリア置換法を用いた世界初の赤ちゃんが今年、メキシコで誕生した。

 この新生児は、今回の最新研究で使用されたのと同じ「紡錘体置換法」によって誕生した。この手法は「前核移植」とは異なり、受精卵の破壊を伴わない。

 これまでのところ、病気を引き起こすミトコンドリアを持つ女性のための「3人の親を持つ赤ちゃん」が認可されている国は、英国だけだ。(c)AFP