【9月30日 AFP】女性2人と男性1人の3人のDNAを混合する新技術を用いて、健康な男児を誕生させたとする驚くべき結果が28日、発表された。数多くの問題を解決に導くとされるこの新技術は、また同様に多くの科学的、倫理的問題を投げかけている。

■どのような技術か

 食物をエネルギーに変換する細胞小器官のミトコンドリアは、独自のDNAを持っている。このミトコンドリアDNAは、遺伝形質を規定する細胞核内の核DNAとは異なるもので、母親からのみ受け継がれる。この補助的な母親のDNAを通じて、少数のまれな遺伝性疾患が継承される可能性がある。その中には、致死性の疾患も含まれている。

 このミトコンドリア異常を回避するために、3人の「親」を関与させる技法としては、主に次の2つがある。

 一つは、子どもを持ちたいと希望するカップルによって形成された受精卵から、健康な核DNAを取り出し、その核DNAを、細胞核を除去したドナーの受精卵に組み込むという技法だ。

 もう一つ、「紡錘体置換法」と呼ばれる技法では、この交換を受精していない卵細胞間で行う。母親の健康な核DNAを、正常なミトコンドリアを持つドナーから提供された、細胞核を除去した卵細胞に組み入れる。こうして組み立て直した卵細胞を、その後、体外受精によって精子で受精させる。27日に全世界に向けて発表された「3人の親を持つ」赤ちゃんは、この紡錘体置換法によって誕生した。

 3人のDNAから受精卵を作るこれら2つの新技術について、英国ではその両方が原則として認可されている。同国は、新技術の使用を認める規制の枠組みを持つ唯一の国だ。だが、英国の保健機関は、安全性に関する報告書をいまだ審査中であり、診療所がこの治療を実施することをまだ正式に認めていない。英政府の直轄機関「ヒト受精・胚機構(HFEA)」によると、安全性審査については数か月以内に結論が出る可能性が高いという。