【9月13日 AFP】世界の言語の3分の2近くで、日常的なものを言い表すのに類似した音が使われている事例が多くみられるとする研究論文が12日、発表された。

 米科学アカデミー紀要(PNAS)に発表の国際研究チームによる論文によると、音声と意味との間の関係は完全に無作為的だと考える説が、言語学の原則として長年支持されているが、今回の研究はこの説に異を唱えているという。

 米コーネル大学(Cornell University)のモーテン・クリスチャンセン(Morten Christiansen)教授(心理学)は「このような音声の象徴的なパターンは、世界中で繰り返し登場する。これは、人の地理的な分散とは無関係であり、言語の系統とも無関係だ」と説明する。

 コーネル大の認知神経科学研究所の所長を務めるクリスチャンセン教授は「これらのパターンを発生させる、人の状態に関する何かが、実際に存在しているように思われる。それが何かは分からないが、存在していることは分かる」と続けた。

 今回の研究では、世界で現在使用されている6000種類以上の言語の62%を対象に、数十の基本単語を分析。分析対象の単語には、代名詞、体の部位、動物、形容詞、動作を表す動詞などが含まれていた。

 その結果、分析した単語のすべてではないが、「基本単語100語のかなりの割合で、人間の言語音と強い関連性を有している」ことが分かったという。

 論文によると、例えば大半の言語で、「鼻(nose)」を表す単語には、「ナー(neh)」や、「ooze」などにみられる「オー(oo)」などの音が含まれる割合が高いという。

 また「舌」を表す単語には「フランス語の『ラング(langue)』にあるような『ル(l)』が含まれる割合が高かった」という。

 さらには、「砂(sand)」を表す単語には「ス(s)」音が含まれる割合が高く、「ル(r)」音は、「赤(red)」や「丸い(round)」などの単語に含まれる割合が高かった。

 今回の研究についてクリスチャンセン教授は、これらの音がすべての単語に含まれるわけではないが、その関連性の強さは予想される偶然の期待値をはるかに上回っていると述べている。

 最も強い関連性の一部は、体の部位を表す単語にみられたという。

 特定の音が特定の単語に関連している理由を解明するには、さらに研究を重ねる必要がある。

 今回の論文の共同執筆者には、スイス・チューリヒ大学(University of Zurich)、オランダ・ライデン大学(University of Leiden)、独マックスプランク人類史科学研究所(Max Planck Institute for the Science of Human History)、独ライプチヒ大学(University of Leipzig)などの研究者らが名を連ねている。(c)AFP