■専門家からの警鐘

 米ハワイ大学(University of Hawaii)の科学者、フロイド・リード(Floyd Reed)氏によると、遺伝子ドライブ技術は多様性に富んだものだという。

 中には、改変個体の小規模な1回の放出から拡散して、種全体の遺伝形質を転換させることが理論上可能な技術もあると、リード氏はAFPの取材に応じた電子メールで述べた。そして、「これらは極めて慎重に取り扱わなければならない。生物集団を改変する遺伝学的技術としては、より安全性が高く、地理的な自己制御が働き、またその影響が可逆的な別種の技術も存在する」と説明した。

 今回のIUCN世界自然保護会議では、「遺伝子ドライブを自然保護や他の目的のために使用することに関する、実地試験を含めた研究の支援や支持」を、迅速評価が完了する2020年まで行わないとする動議が採択された。

 だが、動議は拘束力を持たないため、研究の推進に直接歯止めをかけることにはつながらないとみられている。

 英国の高名な霊長類研究者、ジェーン・グドール(Jane Goodall)博士を初めとする他の科学者らや環境保全専門家ら数十人は、軍隊、農業、自然保護などへの遺伝子ドライブの使用に懸念を表明する公開書簡に署名している。

 公開書簡は、「自然界に大量虐殺の遺伝子を不可逆的に放出することの明白な危険性」に触れながら、遺伝子ドライブを使用するすべての研究計画の中止を呼び掛けている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN