■驚くべき結果

 AFPの取材に応じた電子メールでエンリケス氏は、実験では、一方のグループのマウスが他方よりも「健康的に加齢し、寿命の中央値が大きくなった」と説明している。

 実験用マウスの寿命は2年あまりだ。2歳の時点で各グループから採取した標本を比較した結果、一方のグループに「健康状態が優れていることの明白な兆候」が現れていることに、研究チームは気が付いた。

 研究チームによると、より健康的だったグループのマウスは「毛並みがより豊かで、光沢がある」だけでなく、「体が頑強で、筋肉量も多く、より活動的」だったという。肝機能も優れていた。

 この結果について、エンリケス氏は「異なるミトコンドリアDNA変異が、個体間の性質の違いに関与している可能性があるということに関して、これが人に当てはまらないとする理由が見つからない」とコメントしている。

 今回の研究に参加していない専門家らからも、この結果を驚くべきものだとする声が上がっている。ミトコンドリアDNAの組み合わせが、これほど明白な影響を与えるとは、大半が予想していなかったようだ。

 これが人の健康に対してどのような意味を持つかについては、まだ不明だが、専門家らは、この結果が「前核移植」の分野で重要になる可能性があることを指摘している。前核移植は、疾患を引き起こす異常なDNAを取り除いて胚を生成する技術だ。

 英ニューカッスル大学(Newcastle University)細胞分子生命科学研究所(Institute for Cell and Molecular Biosciences)のロバート・ライトウラーズ(Robert Lightowlers)所長は、今回の研究が「ミトコンドリアDNAの交換に関する、必要かつ継続的な議論への重要な寄与となる」と述べた。その一方で、英ロンドン大学キングスカレッジ(King's College London)の幹細胞研究者、デュスコ・イリッチ(Dusko Ilic)氏は、今回の結果を「非常に興味深く、度肝を抜かれる」と表現しつつも、さらに研究を重ねて人で再現可能かどうかを判断する必要があるとした。(c)AFP/Mariëtte Le Roux