■なぜか?

 今回の研究では、高等教育と腫瘍との関連性についての説明や、喫煙や飲酒などの環境や生活習慣の要因による潜在的影響の考察などは試みられなかった。

 学校教育を受けた年数に応じてリスク水準が上昇することについては、教育水準や所得が高い人ほど「症状に気付きやすい」というのが最も一般的な説明だとカノルカール氏は述べる。これは、そうした人ほど、助けを求めて正確な診断を受ける可能性が高いことを意味するからだ。

 だがこの説明は、明らかに富裕層に有利に働く医療制度を持つ国には当てはまるかもしれないが、スウェーデンの状況では、この説明の説得力ははるかに弱くなると、研究チームは指摘する。なぜなら、スウェーデンには、万人に共通の医療制度があり、誰もがほぼ平等に治療を受けることができるからだ。

 そして、グリオーマの形成は、多くの場合48時間以内と非常に急速で、耐え難いほどの痛みを伴うため、「症状は回避できるものではなく、何もせずに家にいて病院にかからないなどは不可能」であることも同様に指摘された。

 研究チームは今後、この研究をさらに進めるために、民族性と脳腫瘍リスクとの間に存在し得る関連性に焦点を当て、診療情報データベースの最新版を詳細に調べる予定だ。カノルカール氏は、異なる地理的地域を出身地としながらも、特定の変異を多少なりとも共有する人々の基礎的な遺伝的多様性が、要因の一つになる可能性があることを認めている。

 今回の研究を論評している専門家の一人は、その他の考えられる要因を指摘した。

 英オックスフォード大学(University of Oxford)の臨床疫学者、ジェームズ・グリーン(James Green)氏は、「これに関連するかもしれない要因がさらに2つある。身長と、女性の場合のホルモン補充療法だ」と話す。

「脳腫瘍のリスクは、大半のがんのリスクと同様に、身長が高い人ほど大きくなる。また、身長が高い人ほど、裕福で教育水準が高い傾向にある」と指摘し、「ホルモン補充療法は、脳腫瘍リスクを上昇させる。そして、この療法の利用状況は、社会経済的集団によって差がある傾向がみられる」とその背景にあるものを説明した。
(c)AFP/Marlowe HOOD