【4月16日 AFP】蚊が媒介するジカウイルスは、初めて発見された1947年以降、大きな進化を遂げていたとする研究論文が15日、専門誌「セル・ホスト・アンド・マイクローブ(Cell Host and Microbe)」に掲載された。ジカウイルスが出生異常を起こす能力を獲得した経緯の解明に道を開く可能性がある成果だ。

 研究を行ったのは米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)と中国医学科学院(Chinese Academy of Medical Sciences)、北京協和医院(Peking Union Medical College)の研究者ら。

 ヒトから採取した30種、蚊から採取した10種、サルから採取した1種のジカウイルスの株41種を比較したところ、アジア系統とアフリカ系統の間に「過去半世紀でアミノ酸とヌクレオチド配列に著しい違い」が生じていたことが分かったという。

 遺伝子的に見ると、ヒトから採取されたジカウイルスは、1968年にナイジェリアで発見されたものよりも1966年にマレーシアで発見されたものに似ていた。このことはアジア系統のジカウイルスが進化して現在流行しているウイルスになったことを示唆していると、論文は指摘している。また2015~16年にヒトから見つかったジカウイルスはいずれも、13年に仏領ポリネシアで流行したものと最も近い関係にあるとみられるという。

 研究チームは、ヒトから採取されたアジア系統のジカウイルスと蚊から採取されたアフリカ系統のジカウイルスでは、ウイルスに含まれる「prM」というタンパク質が大きく異なることも発見した。

 研究に参加したUCLAのGenhong Cheng教授(微生物学・免疫学・分子遺伝学)は、ジカウイルスのヒトへの感染が南北米大陸で拡大した理由の少なくとも一部は、このようなジカウイルスの変化で説明できるだろうと述べた。

 蚊が媒介するウイルスで、先天異常の小頭症の原因となるものはこれまで知られていなかった。ジカウイルスが胎児の先天異常を引き起こす理由を正確に明らかにするには、さらなる研究が必要だという。

 ジカウイルス感染の中心地となっているブラジルでは、昨年以降に生まれた小頭症の新生児は数千人に上るとみられている。専門家によると、昨年から今年にかけて感染が拡大しているジカウイルスの株はまだ蚊から分離されるには至っていない。米国の保健衛生当局によると、性交渉でも感染するジカウイルスのワクチン開発は数年先になると予測されている。(c)AFP