■「経済移民は欧州に来るな」

 このホテルは、国境を目指す移民や難民らでごった返しており、屋外の駐車場にも数多くのテントが設置されている。

 ここで3週間にわたり滞在しているという26歳のエジプト人、ムスタファさんは、経済的な理由で密入国斡旋業者に頼ることができない。だが、単独での越境にも踏み切ることができず、ただただ途方に暮れているのだという。

 AFPの取材に応じたムスタファさんは、「知り合い2人がセルビアで拘束され、半年間投獄された」と話した。そして、エジプトは「安全な国」であり、経済移民は帰るべきとの欧州の近視眼的な見方を批判した。

 ムスタファさんは、「(エジプトでは)毎日、暗殺が起きている」としながら、彼の兄弟もスナイパーによって射殺されたと訴えた。

 パキスタン出身という別の男性は、過去3か月で11回にわたり越境を試みていると明かした。取材を受けた時は、次の機会に向け準備を整えている最中だった。彼の仲間の一人は腫れあがった指を見せ、警察の暴力によって痛めたのだと話した。

 同地域での難民や移民を取り巻く現状について、ギリシャの副内相(警察担当)は「北へ向かうためにどんな手でも使おうとする人たちがいる」「基本的に、こうした人は国境が閉鎖されていても関係ない」と国営テレビで述べた。

 だが欧州連合(EU)のドナルド・トゥスク(Donald Tusk)欧州理事会常任議長(EU大統領)は今月初め、モハメドさんのような人々に対して、明確なメッセージを発している。

 トゥスク議長は、訪問先のギリシャ・アテネ(Athens)でアレクシス・チプラス(Alexis Tsipras)首相との会談後、「どの国からであれ、不法な経済移民となり得る全ての人に訴えたい。欧州には来るな」「密航業者を信じてはいけない。命や資産を危険にさらしてはだめだ。全て無駄になってしまう」などと述べ、経済移民として欧州を目指すことに意味はないと訴えた。(c)AFP/Sophie MAKRIS