【3月3日 AFP】宇宙のはるかかなたで瞬間的に強力な電波が爆発的に放射される「高速電波バースト(FRB)」で、電波が複数回にわたって発せられている謎の現象を発見したとの研究結果が2日、発表された。FRBは、その存在が初めて発見されてからまだ10年足らずしかたっていない。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された研究論文によると、この繰り返し続くパルス状の電波は、天の川銀河(Milky Way Galaxy)のはるか遠方から発せられているという。

 1000分の1秒間に放たれるエネルギー量が、太陽放射の約1万年分に匹敵するFRBは、電波が単発的に放射される現象とこれまで考えられていた。

 2007年に発見されたFRBは、これまでに20回足らずしか観測されていないが、日々1万回以上は発生していると考えられている。

 発生源はいまだに不明だ。天文学者らはこれまで、恒星が爆発して超新星になったり、中性子星が崩壊してブラックホールに変化したりなどの激変的な事象によってFRBが発生するとの仮説を立てていた。

 だが、今回の最新観測データが示している複数回のパルスは、これらのどの仮説シナリオにも合致しないため、このデータをどのように解釈すべきかについて、科学者らは困惑している。

 論文の共同執筆者で、カナダ・マギル大学(McGill University)宇宙研究所の大学院生であるピーター・ショルツ(Peter Scholz)氏は、米自治領プエルトリコ(Puerto Rico)にあるアレシボ天文台(Arecibo Observatory)の電波望遠鏡で収集された観測データを調べていて、2015年11月に複数回の高速電波バーストが発生した証拠を発見した。

 ショルツ氏は、声明で「この発見が、FRBの研究で極めて重要なものになるということがすぐに分かった」と述べている。

 同天文台の世界最大級の電波望遠鏡は、合計10個の電波パルスをとらえていた。これらは全て、1分以内にまとまって観測されていた。

 論文の主執筆者で、ドイツ・ボン(Bonn)にあるマックス・プランク電波天文学研究所(Max Planck Institute for Radio Astronomy)の研究者であるローラ・スピットラー(Laura Spitler)氏は「バーストが繰り返されることだけでなく、光度とスペクトルも、他のFRBとは異なっている」と話す。

 今回の最新研究は、ネイチャー誌に先週発表された研究と食い違う結果になっているように思われる。先週発表された研究では、FRBが1回限りの激変現象で発生すると結論付けられていた。

 だが目下のところ、FRBの発生源は2種類以上存在する可能性があると考えられている。

 複数回のパルスは、極めて強力なエネルギーを放つ回転する中性子星などの「異種天体」に由来するものである可能性があると研究チームは推測している。(c)AFP/Marlowe Hood