【1月22日 AFP】海水中の二酸化炭素(CO2)濃度が上昇することで、2050年までに、魚が「炭酸酩酊(めいてい)」に陥り、海で迷子になる可能性があるとの研究結果が20日、発表された。

 人間による石炭、石油、天然ガスなどの燃焼で排出されるCO2の約3分の1は、海に吸収される。これによって海水の化学組成が時間とともに変化し、酸性度が高くなる。

 豪ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)の研究チームは今回の研究で、CO2濃度の上昇によって2050年までに、高炭酸ガス血症として知られる現象が魚に発生する可能性があるとの推算結果を示した。この2050年は、起こり得ると従来考えられてきた時期よりはるかに早い。

 研究論文の主執筆者、ベン・マクニール(Ben McNeil)氏は声明の中で、この症状について「実質的に、魚たちは海で道に迷うことになる」と説明している。

「CO2が魚の脳に影響を及ぼすため、魚は方向感覚を狂わされ、巣への帰り道を見つけられなくなる。捕食動物がどこにいるのかすら分からなくなる」

 マクニール氏と共同研究者のトリスタン・サッセ(Tristan Sasse)氏の研究チームが今回行った推算は、CO2排出の動向が最悪事態のシナリオをたどるケースに基づくものだ。これは、人間がCO2排出を抑制するための対策を何も講じないことを意味する。

「今回の研究で明らかになったのは、大気中CO2による汚染が増大し続けると、南極海(Southern Ocean)、太平洋、北大西洋などにあるCO2の高濃度汚染海域に生息する魚や他の海洋生物が、今世紀中期までに高炭酸ガス血症を発症することだ。これは従来の予測よりはるかに早い時期に起き、予想以上に大きな悪影響を及ぼす」とマクニール氏は話している。

 これは、商業漁業や生活の糧としての漁業に深刻な影響を与える恐れがあると研究チームは警告している。(c)AFP