【12月4日 AFP】世界保健機関(WHO)は3日、汚染された食品の摂取により毎年約6億人が病気になり、そのうち約42万人が死亡しているとの推計を発表した。死者数の3分の1近くは子どもで、約12万5000人に上るという。

 推計によると、世界のおよそ10人に1人が毎年、細菌、ウイルス、寄生虫、有害物質、化学薬品などに汚染された食品の摂取により、病気にかかっていることが分かった。食品由来の疾患についてWHOが報告書を公表するのは初めて。

 WHOの食品安全部門の責任者、宮城島一明(Kazuaki Miyagishima)氏は、この問題についての確実なデータを得ることの重要性を強調した。

「これまで、われわれは見えない敵、見えない幽霊と闘ってきた」と、宮城島氏はスイス・ジュネーブ(Geneva)で記者団に語り、食品汚染を数字で示すことは各国が食品安全対策の強化を進める手助けになると述べた。

 2010年までのデータを分析した報告書では、食品を汚染し、それを食べた人数十万人に急性疾患や、すぐに症状は現れないが、後にがんなどの深刻な疾患をもたらす31の因子を特定。また汚染食品が、毎年50万人近い人の命を奪っているほか、多くの人に大きな健康被害をもたらしていることが指摘された。

 報告書の数字について、宮城島氏は「汚染食品が人類に及ぼす最低限の損害」を示したものであり「非常に控えめ」であると述べている。

 食品由来の病原体は、免疫システムが弱い場合に大きな影響力を持つため、子どもらへのリスクが特に顕著となっている。5歳未満の幼児が世界人口に占める割合はわずか9%だが、汚染食品の摂取で病気にかかった人の約40%、また死亡した人の約30%はこれらの幼児だった。

 報告書によると、最も被害が深刻だったのは、アフリカと東南アジア地域で、毎年計31万2000人が死亡していた。一方、食品安全に関する規制が厳しい欧州や南北アメリカではそれぞれ年5000人、同9000人となっている。(c)AFP