■大きな謎

 メイブンは、2013年に打ち上げられ、2014年9月に火星の周回探査を開始した。メイブン(MAVEN)は「Mars Atmosphere and Volatile EvolutioN(火星の大気と揮発の進化の意)」のそれぞれの単語から1文字ずつ取った略語。

 メイブンの目的は、太陽系の最大の謎の一つ、数十億年前の火星で水と大気中の二酸化炭素(CO2)に何が起きたかを解明するための手がかりを得ることだ。

 現在の火星には、地球の大気密度の1%足らずの非常に薄い大気しか存在していない。無人探査車や周回探査機を用いたこれまでの宇宙ミッションでは、火星上で気候変動が発生したことを示す地質学的・地球化学的証拠が多数見つかっている。

 だが、ジャコスキー氏は、これらの変化の背景にあるものに関する知識を増やすことで、火星上の生命の可能性を探る手掛かりが得られるかもしれないと考えていると話す。

 ジャコスキー氏は、「火星にはかつて、水が液体で存在できるほど高い気温を発生させる分厚い大気が存在していたと思われる。液体の水が生命の主要な要素であり、媒体であるのは、現在知られている通りだ」としながら、「われわれは、火星にはかつて非常に濃密なCO2の大気が存在したと考えており、この大気がどこに行ってしまったのかの解明を試みている」と述べた。

 そして、大気イオンの宇宙空間への流出が、火星の気候変動で「重要な役割を担って」いたと研究チームが考えていることも付け加えた。

 メイブンの観測データは、3月に大規模な太陽嵐が発生したことを示唆していた上、大気イオン流出の「劇的な増加が起きたのは、太陽嵐の発生時、コロナ質量放出(CME)が火星に到達している間」であることを示していたと、ジャコスキー氏は指摘。「現在の観測値のばらつきは、太陽の活動が今より活発で激しかった過去には、イオンの流出量がはるかに大きかったことを示唆している」と説明した。

 多くの場合、地球は磁場によって太陽フレアから守られている。太陽からみて地球より遠くにある火星にもかつては同様の磁場が存在していたかもしれないが、火星の核の動きが止まるのに伴い磁場は減衰した。(c)AFP