■「失われた世代」を生まないために

 二流市民のように扱われることに、難民たちは不満を募らせている。彼らの多くはこれまで祖国の紛争が終わるのをひたすら待ちながら、トルコで暮らしてきた。だが今は、地中海経由で欧州へ渡るため、密航業者に渡す資金を貯めている。

 国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)トルコ支部代表のフィリップ・デュアメル(Philippe Duamelle)氏はAFPに「シリア人の家族たちが望んでいることは、世界中の家族と同じだ。つまり安全に暮らし、子どもを養い学校に通わせることができる仕事に就く、医療を受け、未来を手にできるといったことだ」と話した。

 トルコにいる難民の子どもたちへの教育の提供は、トルコ政府だけでなく、自国への難民流入を何とか食い止めたい欧州各国にとっても最優先課題となっている。トルコで暮らす学齢期のシリア難民60万人のうち、学校に通うことができている子どもはわずか3分の1だ。難民の親たちは、子どもを就学させようとする際の障害として、入学資格として求められることの多い居住許可証の取得の困難さなどを挙げている。

 欧州連合(EU)による1250万ユーロ(約17億円)の追加支援を受け、ユニセフは難民の子どものための学校建設のほか、既存の学校の設備拡充なども支援する計画だ。

 学校で読み書きを習うのを楽しみにしているモハメド君は、大きくなったら父親と同じ仕立屋になりたいという。父親のフセインさんは「仕立屋じゃダメだ。おまえには医者か弁護士になって欲しいんだよ」と優しくたしなめた。

 ユニセフのデュアメル氏は、子どもたちが可能性を十分に発揮できないことは「悲惨なこと」だと述べ、今の国際社会は、シリアの子どもたちを失われた世代にしてしまうリスクをはらんでいると警告する。そうなれば、難民の子どもたち本人だけでなく、シリアや中東、さらにそれを越えて破滅的な影響が及ぶだろうと話した。(c)AFP/Clare BYRNE