【8月11日 AFP】宇宙は、永遠の眠りを待ちながらソファで休んでいる人のように、ゆっくりと死を迎えつつあるとの研究報告がこのほど発表された。20万個の銀河から生成されるエネルギーを測定した観測プロジェクトに基づく結果だという。

 国際天文学者チームは、宇宙空間の大半の領域におけるエネルギー生成量について、これまでに完了した中で最も高精度の測定を実施した。その結果、現在のエネルギー生成量は20億年前の約半分しかなく、徐々に減少していることが分かった。

 オーストラリア・国際電波天文学研究センター(International Centre for Radio Astronomy ResearchICRAR)のサイモン・ドライバー(Simon Driver)氏は「宇宙はこれから、まるで永遠に続く晩年期のように、衰退する運命にある」と語り、「つまり宇宙は、ソファにごろりと身を横たえて、毛布を引き上げ、その姿勢のまま今まさに永遠の眠りにつこうとしているのだ」と説明した。

 研究チームは、宇宙論および銀河の形成・進化を調査するプロジェクト「Galaxy and Mass Assembly SurveyGAMA」の一環として、世界有数の性能を持つ望遠鏡7台を使用し、紫外から遠赤外までの21種の異なる波長域で銀河を観測した。

 研究では、豪ニューサウスウェールズ(New South Wales)州の人里離れた地域にあるアングロ・オーストラリアン望遠鏡 (Anglo-Australian Telescope)で8年にわたり収集された観測データと、米航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)が運用する、地球軌道を周回する宇宙望遠鏡で得られたデータが併せて使用された。

■銀河の減速

 米ハワイ(Hawaii)州で今週始まった国際天文学連合(International Astronomical Union)総会でこの成果を発表したドライバー氏によると、宇宙に充満しているエネルギーは、ビッグバン(Big Bang)直後に生成されたものが大半を占めているが、そこには水素やヘリウムなどの元素の核融合によって恒星から放出されるエネルギーが常に追加されているという。

「この新たに生成されるエネルギーは、発生源の恒星が存在する銀河を通る間に塵(ちり)に吸収されるか、もしくは銀河間空間に脱出し、他の恒星や惑星、そして非常にまれではあるが、望遠鏡の鏡面にぶつかるまで進む」とドライバー氏は説明した。

 オーストラリア天文台(Australian Astronomical Observatory)のアンドリュー・ホプキンス(Andrew Hopkins)氏によると、宇宙の星形成率が減少していることは以前から知られている一方、今回の最新データは、エネルギー生成率が全波長域にわたって同様に減少していることを示しているという。

 AFPの電話取材にハワイから応じたホプキンス氏は、「宇宙が膨張し、その膨張率が加速するにつれ、銀河が進化を続けることのできるペースが減速することは知られている。これまでに測定することができた銀河内で星が形成される速度に、この減速が反映されている」と語った。

 今回の観測データは、さまざまな種類の銀河がどのように形成されるかについて、科学者らが理解を深める助けになることが期待されている。

 また研究チームは、エネルギー生成のマッピングを行う現在の観測プロジェクトを、最新の観測施設を用いて宇宙の歴史全体に拡張したいと考えている。この観測施設には、今後10年間で豪州と南アフリカに建設される予定の世界最大級の電波望遠鏡、スクエア・キロメートル・アレー(Square Kilometre ArraySKA)が含まれている。(c)AFP