【7月18日 AFP】テネシー(Tennessee)州でイスラム過激派だったと疑われている男、サウスカロライナ(South Carolina)州の白人至上主義者、コロラド(Colorado)州の映画館で乱射事件を起こした元大学院生──米国では16日、3つの大量殺人事件の犯人または容疑者が一度にトップニュースに並んだ。この3つの事件をつなぐ糸、それは「銃を簡単に入手できること」だ。

 米市民団体「銃暴力防止のためのブレイディ・キャンペーン(Brady Campaign to Prevent Gun Violence)」のダン・グロス(Dan Gross)会長は、発表した声明で「コロラドの映画館で大量殺人を実行した男に評決が下された日に、別の男が銃を乱射し海兵隊員4人を殺害した。こうした事態を前にしても、わが国における銃暴力の深刻さについて政策立案者たちが考えないのだとすれば、一体どうなるんだろう?」と述べた。

 16日、コロラド州では、2012年7月に映画『バットマン(Batman)』シリーズの最新作『ダークナイト・ライジング(The Dark Knight Rises)』の上映中だった映画館で、12人が死亡、70人が負傷した乱射事件を起こした神経科学の元博士課程生、ジェームズ・ホームズ(James Holmes)被告(27)に有罪評決が下された。同じ日、テネシー州ではクウェート生まれ、米国育ちのモハモド・ユスフ・アブドゥルアジス(Mohammod Youssuf Abdulazeez)容疑者(24、死亡)が米海兵隊員4人を射殺し、警察との銃撃戦の中で死亡した。

 グロス氏はもう一人の名前を挙げることもできただろう。先月17日にサウスカロライナ州の黒人教会で銃を乱射し、9人を殺害したディラン・ルーフ(Dylann Roof)容疑者(21)も16日、来年7月の開廷日の告知を受けるために判事の下へ出頭した。

 米連邦捜査局(FBI)が4人以上の殺人にあてはめている「大量殺人」が米国全体の殺人事件に占める割合はわずか約1%にすぎない。にもかかわらず、2週間に1度の頻度で起きていると、米紙USAトゥデー(USA Today)は報じている。「そうした事件にほとんど常に存在する要因の一つは、人を殺せる銃を簡単に入手している点だ」と、米非営利団体「バイオレンス・ポリシー・センター(Violence Policy Center)」のジョッシュ・シュガーマン(Josh Sugarmann)事務局長はいう。

 合衆国憲法下で、すべての米国人には「武器を保有し携行する権利」が認められている。法に従っている銃所有者たちが自由の象徴として、あるいは専制政治を妨げるものとして固く守ってきた信条だ。

 2012年にコネティカット(Connecticut)州の小学校で計26人を殺害し自殺したアダム・ランザ(Adam Lanza)容疑者(当時20)の事件以降、バラク・オバマ(Barack Obama)大統領は銃規制の強化を訴えてきた。しかし、全米ライフル協会(National Rifle AssociationNRA)や銃業界の圧力により、すべての銃購入に身元調査を義務付ける法案は議会を通過していない。それどころか米ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)の14年末の調査では、この20年間の米国で初めて、52%対46%で銃所持賛成派が銃規制賛成派を上回っている。

 仮に限られた範囲の身元調査をしても、前科のある者への銃の販売を阻止できるとは限らない。最近では薬物所持で逮捕歴のあったサウスカロライナのルーフ容疑者がそうで、FBIの身元調査が機能しなかったことで関係者間には衝撃が広がっている。

 16日にテネシー州チャタヌーガ(Chattanooga)にある海軍海兵隊予備軍センターを銃撃したアブドゥルアジス容疑者が、使用したとされる「複数の武器」をどのように入手したのかについてはまだ明らかになっていない。

 しかし、映画館乱射事件のホームズ被告の場合は、事件の数か月前にグロック社製の拳銃2丁、セミオートマチック・ライフル1丁、散弾銃1丁、銃弾6300発を個人売買とインターネット通販を通じて入手していた。13年のFBI捜査官の証言によると、ホームズ被告はそれをまったく合法的にやり遂げていた。(c)AFP/Robert MACPHERSON