【7月7日 AFP】年齢とともに血液中に蓄積する分子が、認知機能の低下に関連している可能性があるとの研究結果が6日、発表された。研究チームは、記憶力回復治療の実現に向けた期待を高める成果だとしている。

 研究チームによると、「B2M」と呼ばれるタンパク質分子は、老化に伴って血液と脳脊髄液中の濃度が高くなるという。

 マウスを用いた実験では、B2Mを抑制することで、学習機能と記憶力の向上がみられた。

 論文共同執筆者の米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco)のサウル・ビジェダ(Saul Villeda)氏は、AFPの取材に「今回の成果は、加齢に関連する認知機能障害の回復が期待できる方法が2通り存在することを示している」と語る。

「1つの方法は、若返りを促進する血液因子を導入すること、もう1つは(B2Mのような)老化促進因子を標的とした治療を行うことだ」と同氏は電子メールで述べた。

 ビジェダ氏が参加した別の研究でも、若いマウスの血液を注入すると、高齢マウスの学習能力と記憶力が高まることが判明していた。この研究は昨年発表されている。

 老化は、認知機能の進行性の低下と、脳内の情報伝達ニューロン(神経細胞)の再生速度低下に関連している。

 英医学誌「ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)」に発表された今回の最新研究によると、免疫に関与するタンパク質のB2Mは、若い血液が記憶力に及ぼす効果を説明する際にカギとなる可能性があるという。

 マウス実験では、B2Mの注入によってマウスの学習能力、記録力、ニューロン成長の低下がみられたと、研究チームは論文に記している。だがこの影響は、注入を止めることで「改善可能」だった。

 また別の実験では、遺伝子操作でマウスからB2Mを排除した結果、「B2Mを持たない高齢マウスは記憶障害を発症しないことが観察された」とビジェダ氏は述べている。

 これらの実験結果はすべて、タンパク質分子のB2Mが、「高齢者の認知能力の回復が期待できる治療で標的となるかもしれない」ことを示唆していると同氏は続けた。

 次の段階としては、B2Mを阻害するか、高齢者の血液から除去することができる分子の開発への取り組みが考えられる。

 B2Mについては、認知症患者の脳脊髄液中に通常より高い濃度で存在することがこれまでに分かっている。(c)AFP