【6月18日 AFP】英ロンドン(London)にある自然史博物館(Natural History Museum)では、雌のガが分泌するフェロモン(生理活性物質)を使って雄のガを混乱させ、雄同士を生殖活動に向かわせるという奇抜なシステムの試験が行われている。布を食い荒らす害虫のガの繁殖を防ぐのが狙いだという。

 英農業技術エグゾセクト(Exosect)は、微量濃度のフェロモンを染み込ませたタブレットを開発。これを雄のガにこすり付けると、他の雄を引き寄せるようになるという。タブレットは、ろう状物質の粉を固めたものだという。

 同社の広報担当、ジョルジーナ・ドノバン(Georgina Donovan)氏は17日、AFPの取材に「この粉は、雄のガの感覚能力を抑え込み、通常通りに雌を見分ることができなくなる」と語った。また「フェロモンの粉が付いていない雄が、粉を塗布処理した雄に出合うと、羽を振動させるなどの交尾行動を示し始める」と付け加えた。

 エグゾセクトは、雄のガを混乱させて他の雄との交尾を試みさせることは、害虫の脅威に対処する方法として、より効率的で環境に優しいと指摘。その点においては、防虫剤に含まれるような従来型の殺虫剤より優れているとした。

 ロンドンにあるハンプトン・コート宮殿(Hampton Court Palace)、国会議事堂(Houses of Parliament)、ロイヤル・オペラ・ハウス(Royal Opera House)とともに同社のシステムを使用している自然史博物館は、試験期間中にガの個体数が半減したと述べている。

 このシステムでは、ガの繁殖サイクルを遮断し、天然繊維を餌とする幼虫の数を減らす。

 近年、断熱材と暖房設備の性能はどんどん向上している。これは同時に、ガにとって理想的な生息条件が形成されていることを意味しており、ますます深刻になるガの問題とも直結するものだ。さらに、天然繊維を用いた衣類や家具を好む傾向が消費者らの間で強くなっていることや、古着の人気が高まっていることも脅威の増大につながっているとエグゾセクトは指摘している。

 エグゾセクトによると、同社の技術は、欧州のその他の国でも利用可能であり、また食品工場で発生する別種のガに対して用いられる同様の製品が、日本や米国を含む世界各地で利用されているという。(c)AFP