■マウス実験で結腸の潰瘍が治癒

 研究チームは一連の実験を行い、試験管内、単細胞内、実験動物に注射した場合でそれぞれ、SW033291が15-PGDHを不活性化できることを明らかにした。

 一部のマウスには、致死線量の放射線を照射後、部分的な骨髄移植を施した。このうち、SW033291を投与したマウスは生存した一方、他のマウスは死んだ。

 また別の実験では、SW033291を投与したマウスは、血球数が正常値に戻るのが、同薬を投与しなかったマウスより6日早かった。

 瘍性結腸炎のマウスにこの治療を施すと、SW033291は「マウスの結腸の実質的に全ての潰瘍を治し、結腸炎の症状を抑えた」と論文は述べている。

 さらに、「肝臓の3分の2を外科手術で切除したマウスにSW033291を投与すると、新たな肝臓が再生されるペースが、投薬しないで通常に再生される場合の2倍近くに加速された」と述べている。

 SW033291は、有害な副作用を示さなかった。

 今回の研究には参加していない、英シェフィールド大学(University of Sheffield)の幹細胞科学と骨老化の専門家、イラリア・ベラントゥオーノ(Ilaria Bellantuono)氏によると、安全性が証明されることを前提として、SW033291の最も有望視される点の一つは、がん患者を助けることにあるかもしれないという。

 SW033291による「治療は、患者の回復力を高め、がん治療に対する患者の反応を向上させる可能性がある」と同氏は指摘し、「今回の研究はマウス実験における概念の実証の段階にあり、この種の治療法の長期的な安全性を検証するためには、さらに多くの実験的研究を重ねる必要があるが、有望な薬であることは確かだ」と述べている。(c)AFP