【5月27日 AFP】エボラウイルスの「アキレスけん」を特定した可能性があるとする研究結果を26日、米国の研究チームが発表した。効果的なワクチン開発のカギを握る可能性のある成果だという。

 米国微生物学会(American Society for Microbiology)のオンラインジャーナル「mBio」最新号に発表された論文によると、エボラウイルスが宿主に感染するには「ニーマン・ピックC1(Niemann-Pick C1NPC1)」と呼ばれるタンパク質が不可欠だと、科学者らは考えている。

 論文主執筆者の一人、米イェシーバー大学(Yeshiva University)傘下のアルバート・アインシュタイン医科大学(Albert Einstein College of Medicine)のカーティク・チャンドラン(Kartik Chandran)准教授(細菌学・免疫学)は「NPC1がエボラウイルス感染の『アキレスけん』であることを、われわれの研究は明らかにしている」と語る。

 エボラ出血熱は、西アフリカでは昨年、史上最悪のエボラ熱流行が発生し、数千人が死亡した。米国には現在のところ、連邦政府に承認されたエボラ出血熱の治療法は存在せず、他所で開発段階にある治療法はすべて、ウイルスを攻撃するものだ。NPC1を標的とすることは、世界初の宿主ベースのエボラ熱治療法となる。

 これまでの生体外実験では、エボラウイルスがNPC1に直接結合して宿主細胞に侵入すること、NPC1に結合するためのウイルスの能力を阻害すると感染を防げることが判明していた。

 このプロセスを生体内で再現できるかどうかを確認するため、研究チームは、通常のマウス、NPC1が完全に欠如するように遺伝子操作したマウス、通常型と変異型のNPC1レベルの両方を有する遺伝子操作マウスの3種類をエボラウイルスに接触させる実験を行った。

 すると、通常のマウスは9日後にエボラ感染で死んだ一方で、NPC1が欠如したマウスは、エボラウイルスに全く感染しなかった。チャンドラン准教授は「NPC1遺伝子の複製をどちらも持たなく、NPC1タンパク質が欠如しているマウスは、感染に対して完全な耐性を示した」と説明した。

 米陸軍感染症医療研究所(US Army Medical Research Institute of Infectious DiseasesUSAMRIID)ウイルス免疫学部門の上級科学研究員、アンドリュー・ハーバート(Andrew Herbert)氏は「NPC1は生体内での発症に必要不可欠であり、これを阻害することができれば、エボラウイルスの複製や発症の兆候はみられなくなる」と付け加えた。(c)AFP