【1月8日 AFP】心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した女性は、そうでない女性に比べて2型糖尿病の発症リスクがほぼ2倍になるとの研究論文が7日、米国医師会(American Medical AssociationAMA)の精神医学専門誌「JAMAサイキアトリー(JAMA Psychiatry)」に掲載された。

 米コロンビア大学(Columbia University)と米ハーバード大学(Harvard University)の公衆衛生を専門とする科学者チームが主導した今回の研究について、JAMAサイキアトリー誌は「PTSDと2型糖尿病との間の因果関係に関するこれまでで最も有力な証拠」を提供していると声明で発表している

 今回の研究に用いられたデータは、1989年から2011年の間に米国人女性5万人近くを対象に実施された調査に基づくものだ。

 糖尿病リスク増加分の約半分は、抗うつ剤の使用(34%)と体格指数(BMI)の上昇によって判断される過食(14%)に起因することを研究チームは発見した。

 だが、リスク増加分のもう半分については理由を明らかにすることができなかった。研究チームは、喫煙、食事、アルコール摂取量、運動などに関連する可能性は排除している。

 そして、PTSDの症状が重いほど、2型糖尿病の発症リスクが高くなることも分かった。

 論文に掲載されている参考資料によると、女性の約9人に1人がPTSDを経験するとしており、これは男性の割合の約2倍に相当するという。

 論文の統括著者で、コロンビア大メールマン校(Mailman School at Columbia University)疫学部のカレスタン・ケーネン(Karestan Koenen)教授は「PTSDは、心の健康に対して破壊的であるだけでなく、体の健康にも悪影響を及ぼし、心疾患、糖尿病、肥満などのリスクを上昇させる」と指摘した。

 今回の研究結果を受け、研究チームは、心に傷を残す出来事を経験した女性の糖尿病の兆候に注意を払うよう医療専門家らに呼び掛けている。

 論文の第一執筆者で、米ハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public HealthHSPH)社会行動科学研究所(Department of Social and Behavioral Sciences)のアンドレア・ロバーツ(Andrea Roberts)研究員は「米国では、PTSD患者の約半数が治療を受けていない状況にある。糖尿病などの慢性疾患に関与する要因への対処として、精神面におけるケアがより大切であることが、今回の研究結果によって明らかになった」と話している。(c)AFP