■危険は過去のもの?

 25年前にソ連が崩壊して以来、世界の核兵器は削減され、技術的な進歩による安全面の向上もあり、事故が起きる確率は減少している。米国は、保有するミサイルは海上に配備されており、米軍機が日常的に核兵器を運送することはもはやないとしている。

 それでも、いまだ世界9か国が1万6300発の核兵器を保有している。うち1800発はすぐにでも発射できる状態にあり、専門家たちは大きな懸念材料はまだあると指摘している。核弾頭そのものは最新化されているかもしれないが、それらが搭載されるミサイルや空軍機、潜水艦は古くなっており、事故はまだ起こり得るのだ。

 たとえば、2009年には英国とフランスの原子力潜水艦同士が衝突する事故が起きたとされる。また先週、英大衆紙デーリー・エクスプレス(Daily Express)は、過去4年間に英海軍の潜水艦で火災が44件起きていると報じた。

 だが最も心配なのは、核兵器を配備するのに必要な時間が短縮されたために「一触即発の」危険があることだと、米国の核ミサイルの元監督官で現在はプリンストン大学(Princeton University)で教えるブルース・ブレア(Bruce Blair)氏は言う。「ロシアはプロセスの自動化によって発射までの時間を短縮した。モスクワ(Moscow)から、遠くはシベリア(Siberia)まで離れた発射装置からミサイルを直接発射するのに、ロシア軍の指揮官が必要な時間は数秒ほどだ」