【12月17日 AFP】ブラジルの科学者らがこのたび、同国リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)のグアナバラ湾(Guanabara Bay)に注ぐ川で「スーパーバグ(抗生物質が効かない超強力細菌)」を発見した。2016年リオデジャネイロ五輪でセーリング競技の会場となっている同湾については、かねてから水質汚染の問題が指摘されていた。見つかった細菌は、医療系廃棄物から発生したとみられており、新たな懸念材料として浮上している。

 同国オズワルド・クルツ研究所(Oswaldo Cruz Institute)による今回の調査を率いた微生物学者のアナ・ポーラ・ダランクール(Ana Paula d'Alincourt)氏によると、最近は同湾に注ぐ川の3か所で発見された。この細菌に接触すると、入院治療を要する感染症を引き起こす恐れがあるという。これまでのところ、付近を泳いで感染した人はいない。

 ダランクール氏は、「感染症を発症する恐れがあるが、その可能性は他の微生物と大差はない。問題なのは、感染した場合に入院が必要になることと、人体に有害という理由で現在は使われていない抗生物質の投与が必要になる可能性があることだ」と指摘した。

 標準的な抗生物質への耐性を示す酵素を生成するこの細菌は、リオデジャネイロを流れる最大の川の一つ、カリオカ川(Carioca River)で発見された。カリオカ川が注ぐフラメンゴビーチ(Flamengo Beach)のすぐ近くにあるマリーナ・ダ・グロリア(Marina da Gloria)では、セーリング競技が開催される予定だ。

 人口1000万人のリオデジャネイロから出る廃水の7割近くは、最終的にグアナバラ湾に流れ込んでいる。数千リットルに及ぶ未処理の汚水が日々排出されているグアナバラ湾についてある著名生物学者は、まるで「トイレのようだ」と形容した。

 同湾には、動物の死骸や、壊れたテレビ、ソファ、靴などの廃棄物が散乱しており、当局は緊急で清掃作業を行っている。

 3月には2016年の五輪開催を見据えた改善計画が策定されたが、湾の清掃は8割までしか完了させることができない見通しであることを当局は認めている。