■代替物質が温暖化を促進

 報告書によると、多くのCFC類は温室効果ガスでもあるため、同議定書に基づく活動によって2010年には、二酸化炭素(CO2)に換算すると約100億トンに相当する量の温室効果ガスが1年間で削減されたという。

 問題なのは、CFC類の代替物質としてハイドロフルオロカーボン(HFC)類への移行が進んでいることだ。HFC類は、オゾン層を攻撃しないが、太陽熱を吸収する強力な物質になる可能性がある。

 現在のHFC類の年間排出量は、CO2に換算すると約5億トンに相当する。

 だが、HFC類の排出量は年間約7%の割合で増加しており、年間のCO2換算排出量が2050年までに最大で88億トンに達する可能性がある。これは、CFC類が1980年代末に達したピーク値の95億トンに近い数字だ。

 温室効果ガスとしての影響が少ない「より安全な」代替物質は、確かに存在する。そうした代替物質を製造に組み込むことで、気候変動へのHFC類の影響は「本質的に」解消されるだろうと国連の専門家らは話している。

 WMOのミシェル・ジャロー(Michel Jarraud)事務局長は「オゾン層に対する国際的な活動は、環境保護に関する大きな成功事例の一つだ」とし、さらに、「だがそのことが足かせとなって、気候変動のさらに大きな課題に対処するために同レベルの緊急性と結束を全面に押し出すことをわれわれにちゅうちょさせていると思われる」と語った。(c)AFP/Richard INGHAM