【9月10日 AFP】エボラ出血熱のウイルスが動物から人に感染するリスクは、アフリカ大陸の22か国、2200万以上の人口が暮らす地域に存在しているとした論文が、8日の科学誌「eLife」で発表された。研究チームによると、そうしたリスクが存在するのは、北はナイジェリアから南はモザンビークにまで及び、これまでの想定よりも広い範囲にわたることが分かったという。

 西アフリカで猛威を振るっている「動物由来感染症」のエボラ出血熱だが、動物からの直接的な感染については、これまでに30例ほどが確認されているのみで、実際の感染リスクは低いとされる。しかし、生物種間で感染するウイルスによって引き起こされる将来的な流行リスクは、人間が居住する区域の拡大を背景に高まる可能性がある。

 非常にまれではあるものの、エボラウイルスに感染したコウモリやチンパンジー、ゴリラといった動物をヒトが食べたり触れたりすることでウイルスに接触し、そこから感染が拡大する可能性は否定できないという。

 最大致死率90%のエボラ出血熱の感染経路は、ウイルス保持者および遺体の体液を通じて起きるいわゆる「接触感染」だ。

 研究チームによると、現時点において動物から人への感染は確認されていないものの、アンゴラ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ、エチオピア、ガーナ、リベリア、マダガスカル、マラウィ、モザンビーク、ナイジェリア、ルワンダ、シエラレオネ、タンザニア、トーゴにその発生リスクがあるという。

 一方、コンゴ(共和国)、コンゴ(旧ザイール)、ガボン、ギニア、コートジボワール、南スーダン、ウガンダでは、動物からの感染が過去に報告されている。

 研究チームは、「かつて予測され認識されていた以上に広い範囲」で、動物からエボラ出血熱が感染するリスクが存在しているとし、「1976年に当時のザイール(現コンゴ民主共和国)でウイルスが初めて確認されて以来、(発生リスクが存在する)地域内の人口は増加している。また人の移動もより活発になり、国境を越えた結びつきが強まっているため、一旦流行が始まると、とりわけ保健医療の設備が貧弱な地域で、とめどなく感染が拡大する恐れがある」と指摘した。(c)AFP