【8月1日 AFP】自殺を図る人々が共通して持つとみられる遺伝子変異を特定したとの研究論文が30日、米医学誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・サイキアトリー(American Journal of Psychiatry)」に掲載された。自殺リスクを予測する血液検査の開発につながる可能性のある成果だという。

 この発見は、米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)の研究チームが行った小規模な研究に基づいている。

 論文の主執筆者で、ジョンズ・ホプキンス大医学部のザカリー・カミンスキー(Zachary Kaminsky)助教(精神医学・行動科学)は「自殺する危険性が高い人々を予測するための一貫性のある方法は今のところ存在しない」と語る。

「今回のような検査を用いて、そうした人々を特定し、最悪の結末を阻止するのに間に合うよう早期に介入することにより、自殺率を抑制できるかもしれない」

 だがこのような検査を一般の人々が広く利用できるようになるのは何年も先のことだ。

 現段階の成果として、脳がストレスホルモンにどのように反応するかに関連する「SKA2」と呼ばれる単一遺伝子の化学変化を発見したと、研究チームは述べている。

 SKA2は「日常生活の緊張に対する特に目立たない反応で終わるかもしれないものを、自殺願望や自殺行動に変えることに重要な役割を担っている」と論文は説明している。

 研究チームは、自殺した人々から採取した脳サンプルを調査して、この変異を発見した。また自殺した人々はSKA2のレベルが健康な人に比べて著しく低下していることもこの調査で分かった。

 さらに研究チームは、ジョンズ・ホプキンス大での自殺予防研究で325人から採取した血液サンプルを検査し、SKA2に存在する変異により、自殺願望を経験している人や自殺を図ったことがある人を80%の精度で予測できることを明らかにした。

 特定のグループでは、この検査の精度はさらに高かった。「さらに深刻な自殺リスクを抱える人々は、90%の精度で予測された」と論文は述べている。「最も若い人々のグループでは、参加者が自殺を図ったことがあるか否かを、血液検査の結果に基づき、96%の精度で特定できた」