【7月14日 AFP】米国やカナダ、ブラジル、アルゼンチン、中国など多くの国々が遺伝子組み換え(GM)作物を温かく受け入れているのに対し、多くの欧州諸国はこれをかたくなに拒み続けている。なぜ欧州の国々は遺伝子組み換え作物を嫌うのか。その方針が変わる見込みはあるのだろうか──。

 欧州連合(EU)は、域内で長年続く、遺伝子組み換え作物をめぐるこう着状態の打開を目指し、6月に新たな法整備を行った。しかしこの新法で遺伝子組み換え作物の栽培をめぐる対立が収まるとは考えにくく、議論は当分続くとみられている。

 域内では遺伝子組み換え作物の捉え方をめぐり、健康や環境への影響を懸念する団体および個人と、農業関連産業のロビー団体との間で対立が生じている。後者は、収穫量の増加と農業部門の収入拡大につながる技術を拒むことで、欧州は農業革新の最前線から後退することになると警鐘を鳴らしている。

 国際アグリバイオ事業団(International Service for the Acquisition of Agri-biotech Applications)によると、EU域内で遺伝子組み換え作物を栽培しているのはスペイン、ポルトガル、チェコ、ルーマニア、スロバキアの5か国のみ。5か国の2013年時点での栽培規模は、全て合わせても世界で栽培されるGM作物全体の0.1%にも満たない。

 欧州の国では、それぞれの政治体制が異なる。地形も多様で、小規模農業が主流だ。こうした要因が、米国や中国でみられる大規模な農業技術の採用を難しくしてきた。EUで栽培が認められている遺伝子組み換え作物は、農業バイオ大手の米モンサント(Monsanto)が開発した害虫抵抗性のある遺伝子組み換えトウモロコシ「MON810」のみ。一方、米国では1990年以降、96種の商業栽培が認められている。

 EUは6月の環境相理事会で、遺伝子組み換え作物の栽培に関する判断を加盟各国に委ねることで合意した。EUの科学顧問が安全だとの見解を示した場合でも、各国は「倫理的」もしくは「社会秩序」の観点から理由付けをして、栽培を禁じることができるようになる。