■水資源をめぐる平和と安全保障が課題に

 気候変動の専門家によれば、一般的に湿潤な地域はより湿潤になり、乾燥した地域はより乾燥するため、洪水や干ばつの危険性が高まることが予測されている。

 水をめぐる小競り合いは暑く乾燥した亜熱帯地方で長い歴史がある。近年も、チグリス(Tigris)川、ユーフラテス(Euphrates)川、ナイル(Nile)川でダム建設の権利などをめぐり争いが起きている。

 IPCC報告書の水についての項目の責任者、ブランカ・ヒメネスシスネロス(Blanca Jimenez-Cisneros)氏は「亜熱帯諸国で利用可能な水は明らかに少なくなる。地表の水も帯水層の水もともに減少し、このことが水資源をめぐる競争を激化させるだろう」と述べた。

 また米国務省は、2012年の米情報機関の評価報告に基づいて「水は人間の健康問題だけでなく、経済発展や環境問題だけでもなく、平和と安全保障の問題でもある」と述べている。

■残された解決策

 地球温暖化への迅速な解決策や人口増加の減速に失敗した今となっては、水危機の主な解決策は効率化に託されている。

 中東の一部の国々では、水の15~60%が蛇口に達する前に水漏れや蒸発によって消失している。

 乾燥した地域の海岸沿いに脱塩施設を建設する計画も魅力的だが、ヒメネスシスネロス氏は「その水は通常の水の最大30倍のコストがかかる可能性がある」と指摘する。

 効率化の方法としては、かんがい設備の高性能化、水を多く必要としない作物や干ばつに強い作物の栽培、冷却に大量の水を使用しない発電施設、そして入浴などに使った水を水洗トイレに再利用するなどの消費者の協力が挙げられている。(c)AFP/Richard INGHAM, Anthony LUCAS