ボス氏の研究チームは、経頭蓋交流電気刺激(tACS)と呼ばれる技術を用いて、明晰夢が起きる原因を調べた。

 tACS法の装置は、電極が付いた2つの小さな箱で構成されており、頭部に隣り合わせに設置されたこれらの箱から、微弱な低周波電気信号が脳全体に送られる。

 研究チームは18歳から26歳までの女性15人と男性12人の被験者を採用し、睡眠検査室で最大4夜を過ごさせた。

 研究チームは、被験者がレム睡眠を2~3分間経験した後、tACS装置または電流を流さない「疑似」の手順を約30秒間作動させた。電流は、被験者が目を覚まさないように知覚のしきい値を下回る大きさに設定した。

 その後、被験者を起こし、それまで見ていた夢の内容を尋ねた。

■夢をコントロールする

 ボス氏は、AFPの取材に「夢の報告内容はみな同様で、被験者の大半が『自分自身を外側から見ている』ようだったと話しており、夢はまるで画面に映った映像のように外側から見られた」と語る。

「また、被験者は自分が夢を見ていることを自覚していたという報告が多く寄せられた」

 被験者に対する実験は、交流電流の周波数を2ヘルツ、6ヘルツ、12ヘルツ、25ヘルツ、60ヘルツ、100ヘルツと変えて行われた。

 ボス氏は「効果は25ヘルツと40ヘルツの場合のみ観察された。これはどちらもガンマ周波数帯下位域の周波数だ」と指摘する。

「この周波数帯は自覚意識に関連しているとされてきたが、これまで因果関係は確立されていなかった。今回の研究でそれが確証された」