【4月9日 AFP】米バージニア(Virginia)州のキャスリーン・ウィーダーマン(Kathleen Wiederman)さん(42)は断固としてワクチンの接種に反対しているわけではない──。ただ娘のことを考えると、自然治癒力で病気に対抗する方が、ワクチンを接種するよりも良いのではないかと考えているだけだ。

「医者だからといって何もかも知っているわけではない」と話すウィーダーマンさんは、代替医療を好む。事実、富裕層が多く暮らす郊外の自宅で、痛み止めの麻酔薬を使用せずに子どもを出産した経験も持つ。

 当初は、子どもの予防接種に関して夫と意見が一致していたが、結婚生活が終わりを迎えると、推奨されたワクチン数種類を娘に接種するよう元夫が強く主張したため、結局ウィーダーマンさんは折れた。

 5歳になる彼女の娘は、水ぼうそうやはしかなどの予防のためにいくつかのワクチン接種を受けている。ただポリオの予防接種は受けていないという。

 では、もし娘が病気になったらどうするのか。

 法律の学位を取得し、現在は企業のリクルーターとして働くウィーダーマンさんはAFPに対して「必要な治療を施し、治すだけ」と答えた。

 ウィーダーマンさんのように、ワクチンの接種を拒む米国人の数は増加しており、はしかや百日ぜきといった感染症の再流行が懸念されている。

 専門家らは、ワクチン接種へのちゅうちょが次第に一般的な風潮となってきており、しかもそれは乳幼児への予防接種にだけ向けられたものではないと指摘する。

 米疾病対策センター(Centers for Disease Control and PreventionCDC)によると、現役世代の大人3人に2人は、毎年実施されるインフルエンザの予防接種を拒否しており、また同じ割合の親たちが、ヒトパピローマウイルス(HPV)の予防ワクチンを子どもたちに接種させていないという。

 ハーバード大学(Harvard University)のバリー・ブルーム(Barry Bloom)教授(公衆衛生学)は、「われわれが心配しているのは、ワクチンの接種をためっている人々だ。彼らは教育水準が高く、中流上位層に属している場合が多い。しかもその数はあらゆる地域で増加している」と話す。

 近年、ワクチンの接種と自閉症の関連性を指摘した報告は誤りだったとみなされるようになったが、ワクチンの副作用を不安視する声は根強い。いくら専門家らが副作用が生じるケースは極めてまれと指摘しても、そうした不安を打ち消すことは難しい。

 CDCによると、医療の進歩の結果、子供たちに接種させるワクチンの種類が、1985年の7種類から現在の14種類にまで増えたことも、一部の親たちを戸惑わせることに繋がっているという。